沢田研二「"オワコン"と言われてから復活」の凄み 75歳のジュリーはなぜ再ブレイクできたのか
このように、昭和の歌謡史をひもとくにおいて、沢田研二という人は、どの時代もジャンルの枠におさまりきらず、その圧倒的存在感を示してきた。
ただ、彼のすごさは、むしろそんなまばゆいスター歴を自ら危機にさらすような“賭け”に出る点にある。
1990年以降から、テレビと距離をとった沢田。これまでの輝かしい経歴からも、あえて一線を引くような活動スタイルとなった。楽曲は自己プロデュースに方向を転換。ライブでは新曲しか歌わず、ときには客席に向かって怒ることもあったという。
この頑なな路線ゆえ、時折インターネットや週刊誌などの記事で名前が出るものの、「頑固で傲慢」とバッシングの対象になったり、“オワコン”扱いされたりもしたのである。
特に大騒ぎになった2018年のドタキャン騒動時、彼は70歳。普通ならこの年齢での大炎上は、再起不能のダメージになってもおかしくなかった。
しかし、ここで驚いたのがファンの反応である。開演約1時間前のキャンセルにもかかわらず、怒るどころか、「ジュリーが健康ならそれでいい」とおとなしく帰路についたのだ。
沢田研二のドタキャンにまず驚き、ファンの対応に驚く。世間はこの騒動で二度驚かされたと言っていい。
沢田研二はなぜ許されるのか。正直、パフォーマンスがボロボロなら、彼は「自分の意志を貫く人」どころか「プライドが高いだけの面倒な頑固ジジイ」となるはずである。
ファンも、沢田研二なら何をしてもOK、というわけではないはずだ。ドタキャン騒動も、その理由が病気ではなかったという安心が先に立っての、あの反応だったのだろう。
そんなファンと足を運んだ観客に向けて、言い訳せずすぐ謝罪し、引退ではなく「80まで歌う」という未来ある目標を宣言する。そして、より熱いステージを展開すべく、努力をするのである。
その経緯を見ると、“許される理由”は、彼のカリスマ性だけではなく、むしろ「一生懸命立ち上がる努力をする」ことにあるのではないか。70代半ばにして全盛期と変わらない歌声を聴くと、そう思えて仕方がない。
そうして沢田研二と彼のファンは、5年かけてバースデーライブの成功にたどり着き、今、75歳で再ブームが起こっている。
沢田研二と同世代のスターたちの活躍
そもそも、沢田研二が今年で芸能活動歴57年ということに驚く。
今は「人生100年時代」とも言われるが、私などは、この3桁の数字に、あまりにも長い未来を想像し、勝手に疲れている。戦争の影、不景気、コロナ。こんなにいろいろあったのに、あと半世紀も続くのか……と、うんざりしてしまう。価値観がコロコロ変わり、時代の変化についていけるか、不安しかない。
しかし、沢田をはじめとした70代のスターたちは、その未来を楽しみにしながらも、「自分がやるべきことを変わらずやる」という一貫したスタンスを持ち、今なおイキイキと活動している人が多い。その息の長さは注目せざるをえない。
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