オフィスビルは空洞化「外資撤退続く」香港の現在 香港はもはやビジネスのできる都市ではない
香港でのビジネスには新たなリスクが一段と伴うようになっている。中国政府を怒らせる政治的なコストのことだ。
中国が2020年に施行した国家安全維持法と香港の立法会(議会)が今年3月に可決した追加の条例によって、香港の変化は加速している。いずれの立法も、約30年前に香港がイギリスから返還された際に中国が約束した限定的な自治に打撃を与えた。
そして5月28日、香港は新たな治安維持条例を初めて適用し、1989年の天安門事件に関し扇動的な内容をフェイスブックに投稿した容疑で6人を逮捕した。
「香港は終わった」相次ぐ事務所閉鎖
法律や金融など専門職の仕事は今や犯罪となった「外部からの干渉」で調査される危険にさらされている。こうした新たな動きは、中国と西側諸国との緊張の高まりや、かつて香港をうまく機能させていたディールメイキング(取引)を減退させている中国経済の落ち込みとともに、以前は活気にあふれていた香港経済に暗い影を落とすようになった。
そのため、一部の外資系企業は香港からの撤退や香港事業の急速な縮小を強いられつつある。
ここ数カ月で、ウィンストン・アンド・ストローンとアドルショー・ゴッダードという2つの国際法律事務所が香港事務所を閉鎖した。ウォール街の銀行は、香港株式市場における中国企業の資金調達というドル箱事業をかつて担っていた従業員の削減や降格を実施。以前は香港に巨額の投資を行っていたアメリカの年金基金も、香港を避け始めるようになっている。