高齢者定義「65歳→70歳」引き上げで起こる"困惑" 年配の人々のあり方が多様化した今、考える事

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このことは日本に限ったことではなく、2023年秋にフランスの年金受給年齢が62歳から64歳に引き上げられたときも、国を挙げて大ブーイングになりました。

一方で、高齢者が「65歳から」というのは、現代医学の水準に鑑みてみると、どうにもしっくりこないのは確かでしょう。医師から見た風景というわけでなく、皆さんから見ても、世の65歳はおおむね元気でしょう。

この機会に改めて各種の高齢者のデータをひもといてみようと思います。

昔に比べて60代はまだまだ元気

まず、元気に関して。

平均寿命はこの50年で男女とも10歳以上延伸し、男性が81.05歳、女性が87.09歳と、男女とも80歳を超えています。健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を指す健康寿命も、同様に延伸しています。

体力に関しても文部科学省の実施する「新体力テスト」では、65歳以上の体力スコアが男女とも年齢(5年区切り)にかかわらず、この20年で10%程度増加していることが明らかにされています。

次に、WHO(世界保健機関)ですが、世界的に合意された「高齢者」を定義する年齢は存在しないとする一方、先進国では一般に65歳から高齢者としていると言明しています。

そして、高齢者の雇用にかかわる高年齢者雇用安定法。

高齢者がより長く活躍し、年金などの社会保障制度の負担も軽減するというねらいのもと、「まだ60代前半ではフルに労働できるよね、全然OKでしょ?」ということで、会社は65歳まで雇用を確保することが義務づけられ、さらには、企業努力で70歳まで仕事を続けられるようになりました。

年金の受給も65歳を基本とした制度設計になっています。

現役世代と受給者の負担バランスを改善したということではありますが、長期にわたる人口動態と、それに伴う歳出入の変化に、元来の制度が対応しきれなかったことは確かだと思われます。

このように、社会の制度や仕組みは「65歳以降を高齢者」と見なしているわけです。

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