松井道夫・松井証券社長--従来とは異なる競争上の軸を提案し、競争環境の転換を図る

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 こうした状況は、コモディティ化した産業がすべて通ってきた道だ。私が以前在籍した海運業界でも、30年前に同じことが起こった。鉄鋼業界でも、日本製の高価な自動車用鋼板と同レベルの鋼材を海外メーカーも作れるようになった結果、日本メーカーは苦戦を強いられている。
 
 証券業界は極めてドメスチックであり、価格競争が起こりやすい。特にリテール(個人向け取引)事業は国内が中心で、完全に過当競争に陥っている。

しかし今後、長きに渡ったデフレの潮目が変わるのは避けて通れない。デフレの中で起きた安売り競争という構図はどこかで変わるだろう。今はそれに向けた体力戦が続いている状況だ。

--他社との差別化をどう打ち出すのか。
 
 今秋、即時決済取引における信用取引を導入する予定だ(注:即時決済取引とは、約定と同時に株式と代金を受け渡しする取引のこと)。これにより、信用取引において同じ担保で同日に複数回の売買が可能になるなど、投資家にとっての資金効率が飛躍的に高まる。

今のネット証券のビジネスのベースには、コスト構造の転換があった。それは店舗型の対面証券会社のビジネスモデルを否定したことから生まれた。それによって、ビジネスモデルは根本的に変わった。
 
 したがって、今後も単に手数料を安くするだけでは、ビジネスの革新性は生まれない。もっと違う軸が必要だ。

そこで変えようとしているのが、取引所に橋渡しをするブローキング業務という役割そのものだ。今、デイトレーダーを中心とする個人投資家がいちばん重視しているのは資金の効率性である。それが即時決済取引における信用取引の導入により抜本的に向上する。いずれ、具体的な中身をもっとわかりやすい形で発表する予定だ。

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