「任天堂は落ち目だ」それでも私が全てを懸けた訳 スモールビジネスだった業界に見いだした未来
なかでも大好きだったのは「ゼルダ」のシリーズだ。ゲーム好きは子どもたちも同じで、自分でゲーム体験を広げていった。ここからも、我が子と同年代の子たちが自分で稼げるようになれば、ゲーム産業はさらに著しく成長していくことが窺える。
子どもたちのゲーム好きが、そのまた子どもたちにも伝わる未来が想像できる。私はこの産業に輝かしい未来が見えた。ただしそれを実現するためには、きちんと主導していかなければならない。
私は任天堂が直面する主な問題と、自分ならそれをどう解決するかを、何ページもメモに記した。友人やメンターはやめておけとアドバイスをくれたものの、私なら任天堂を変えられると判断し、すべてを懸けることにしたのだった。
当時の任天堂の問題点とは?
入社までのプロセスは、リクルーターとのビデオ会議から始まった。後に知ったのだが、これは録画され、NOA(Nintendo of America)のスタッフに社内で共有された。このビデオに基づいて、私はワシントンのレッドモンドにあるNOAの本部に招かれた。
ピーター・メイン(NOAの初代セールスとマーケティングのEVP)、ハワード・リンカーン(元NOAのチェアマンで、その後当時山内溥氏とNOAが株を過半数所有していた野球チーム、シアトル・マリナーズのCEOとなる)、君島達己氏(当時NOAの社長)らの過去と現行の重役たちと、丸1日かけて面接を行った。
NOAの人事部長だったフリップ・モースと、ランチを兼ねて積極的なやり取りをしていたとき、私の入社はあやうくご破算になるところだった。私が社員の研修や育成について、フリップにいくつか基本的な質問をしたのがいけなかった。
「レジー、ここではそこまでやっていない。うちは日本の会社の子会社なんだ。向こうは人材育成にあまり力を入れていない」
「ですが、フリップ」と私は切り出した。「私の意見はまったく違います。組織を伸ばして人に投資することは、基本的なことだと思います。新たなスキルを学ぼうという強い組織でなければ、新たなチャレンジに向き合うことは困難です」
こうしたやり取りがしばらく続き、私の中で大きな懸念が生じた。ここまでキャリアを積んできた私は、組織が成功する唯一の方法は、各段階で優秀な人材を置くことだと考えていた。
トップにいるリーダーが優秀なだけでは足りない。スタッフの業績を伸ばすために時間をかけて育成、研修、コーチングを行う必要があることもわかっていた。リーダーはみなこうした人的投資を行う必要がある。
続くハワード・リンカーンとの対話で、私の懸念は緩和されていった。
「レジー、もちろんNOAでは優秀なリーダーは、スタッフに対して時間とエネルギーを投資している。実際、セールスとマーケティングのEVPは、NOAでは特に重要な仕事なんだ。君にはたっぷりの裁量を与えよう。そして君の行動に組織全体の注目が集まるから、君のチーム育成への投資ぶりを見れば、それが受け入れられて会社全体に行き渡るはずだ」
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