フランスで増加「環境問題で引きこもる子」のなぜ ジャーナリストの西村カリン氏に話を聞いた

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──日仏の若者の環境意識に差があるのは、学校で教える内容に違いがあるからでしょうか。

大きな違いはないと思います。水や電気を大事にしましょう、ゴミは分別して捨てましょうと教えるのは、日本の学校もフランスの学校も同じです。

それなのに環境意識の差が出るのはなぜか。学校で教わることと実際の社会に「矛盾」があるからだと私は考えています。

たとえば、学校では節電しようと教わります。でも、渋谷のスクランブル交差点に行けば大型ビジョンやライトアップされた看板だらけで、広告トラックが走り回っている。大人が節電していないんだから、子どもの自分が声を上げてもどうにもならない。節電しなくていいと思っているのではないでしょうか。

──フランスにはそうした矛盾はないのでしょうか。

フランスでは、矛盾があれば若者が指摘します。実際、夜間に看板の照明がついたままなのはおかしいと感じた若者が、勝手に店の看板の電気を消して回ったことがありました。でも、それで大人が怒ることはありません。むしろ若者の行動のおかげで大人の意識が変わり、ルールまで変わりつつあるんです。

日本で若者が同じことをしたらどうでしょうか? きっと大人は怒るでしょうね。「確かに地球に優しいけれども、勝手に電気を消すのはよくない」と言うと思います。

正しいことを言っても怒られるのなら、若者が何も言わなくなるのは当たり前です。

日本の若者が環境問題に対して無関心に見えるとしたら、それは大人のせいです。若者が自分の考えを表現する場がないのが、日本の教育の弱点であると私は思っています。

「議論」のできる環境を学校でつくる

──自分なりの考えを持てと言いながら、実際にそれを表に出せば怒る大人は多い。どうすればいいと思いますか。

子どもたちが意見を言える環境を、まずは学校でつくることです。自分の考えを言うのは大事ですが、SNSで言いたいことだけ匿名で言うのはよくありません。

大事なのは「議論」をすることです。自分の意見を言い、相手の意見を聞く。お互いの意見を取り入れて、どんどん変化していく。そうした議論のプロセスを学ぶことが重要です。

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