社会保障拡充に協力的な財界と反発する労働組合 子育て支援金をめぐる日本の摩訶不思議な現象

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子ども・子育てを支える支援金の話は、元々は、2017年の自民党政調会「人生100年時代の制度設計特命委員会」に提出した次の図から始まった。

高齢期向けの年金、医療、介護保険という、主に人の生涯の高齢期の支出を社会保険の手段で賄っている制度の持続可能性を脅かす最大の要因は少子化である。そこでこれらの制度が、自らの制度における持続可能性、将来の給付水準を高めるために支援金を拠出し、その資金が子ども・子育てを支える。

制度が具体的に設計されていく法制上の手続きの過程で、複数の制度から集めるのを避けるために、介護保険の賦課ベースを包含し、かつ年金からの特別徴収(天引きの仕組み)を持つ医療保険が代表して支援金を集めてこども金庫に拠出して、こども金庫からこども・子育てのために所得を再分配するというふうになっていった。その際、2021年骨太方針に書かれていた「企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯」した新たな枠組みを考えていく中で、この国に住む参加者全員が関係している皆保険下の医療保険の賦課・徴収ルートを活用するということに議論は収斂していった。

医療保険の賦課・徴収ルートを活用する意味

繰り返しになるが、介護保険の賦課ベースは医療保険のそれの部分集合であり、医療保険、介護保険の両方に、高齢者には年金給付からの特別徴収という天引き制度がある。支援金制度は、高齢者への年金からの特別徴収を踏襲することになるので、高齢者からの支援金拠出は、公的年金の協力の下に実施されることになる。いわば既存の高齢期向けの社会保険が勢揃いで子育てを支援する仕組みが設計されていったわけである。

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