一枚のハガキ --新しい道を切り開く、折れない強い心が必要《宿輪純一のシネマ経済学》

邦画界最高齢(1912年生まれで現在99歳)の現役映画監督である新藤兼人が、自らの苦悩の戦争体験をベースに描く人間ドラマ(ちなみに世界ではポルトガルに1908年生まれのマノエル・ド・オリヴェイラ監督がおり、世界では2番目の高齢)。
 
 本作品は昨年の第23回東京国際映画祭審査員特別賞も受賞している。しかし、残念ながら新藤監督は本作品を最後の監督作としている。

時期は太平洋戦争末期で、中年兵士も召集された。その中年兵士のグループの100人のうち94人が戦死し、6名が残った。その明暗は上官による“くじ引き”だった。主人公は生き残ったが、生き残るのも苦悩となる。

特に戦後、残った主人公・啓太(豊川悦司)の家庭と、戦死した友人の家庭が崩壊していき、主人公たちが新しい道を選択し、進んでいく姿を描いている。



    ©『一枚のハガキ』近代映画協会/渡辺商事/プランダス


 啓太の仲間の定造はフィリピンに送られることになった。戦死を覚悟した彼は啓太に妻の友子(大竹しのぶ)が書いた一枚の愛情あふれるハガキを託す。軍隊の検閲が厳しく返事が出せなかったのである。もし、啓太が生き延びることができたら、妻にハガキは読んだとだけ伝えてくれと頼まれ、啓太は友子に届けに行く。
 
 昔はよくあったとも聞くが、定造は貧しい農家の長男であり、友子は定造の弟と再婚させられる。その弟にも召集令状が来て出征し、また戦死する。舅と姑が家に残る。愛人になれと迫る男もいる……。
 
 また、啓太の家庭ももっと悲惨なことになっていた。妻が父親と関係していて、復員すると駆け落ちした。くじ引きで生き残ったが…という感じもする。啓太は友子を訪ねて行く。想像を絶した苦難に対応していく中で、2人で新しい道を切り開いていく。

間もなく日本は8月15日の「終戦記念日」である。この時期、戦争が大きな社会テーマとなる。もちろん戦争だけは起こしてはいけないのは言うまでもない。新藤監督も実際に召集され二等兵として海軍に入隊。

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