「学校で暴れるわが子」を見た母親にかけた"言葉" 「にんじん嫌い」は子どものわがままじゃない?
「お母さん、忙しいところ悪いけれど、学校に来られる日ありますか? 子どもには内緒で来てくれますか?」と。そして、廊下で「わーっ」と暴れている子どもの様子を本人には気づかれないように、離れた場所からそっと見てもらったんです。
お母さんはその姿にびっくりして、言葉を失ってしまいました。そして、涙をぽろぽろ流しながら「先生、すみません。あんなに暴れて……申し訳ありません」と。
私はすかさずこう尋ねました。
「そんなこと言わせるために、お母さんを呼んだんじゃないんですよ。あのね、息子さんは家では暴れていますか?」
家ではがまんしているんですね
今まではあれこれわがままを言うこともあったそうですが、家が大変になってから、そういうことがいっさいなくなったとのことでした。
家の事情がよくわかっているお兄ちゃんだったこともあり、弟の面倒もよくみてくれて、「暴れることなんてまったくない」「本当にいい子にしているんです」と。
そして、お母さんは絞り出すように、ぽつりぽつりと言いました。
「きっと、すごく家ではがまんしているんですね。そのぶん、学校でこうして暴れているんですね」
私は頷いてから、お母さんに言いました。
「暴れる場所があって、よかった。息子さんの姿、お母さんは知っておいて。家では決して『学校で暴れるな』なんて、言わないでね。でも代わりに、『最近、大丈夫? あんまりしゃべってないけど、お母さんそばにいるからね』と、あの子が安心する言葉、かけてあげて」と。
学校で暴れて、自分を出すことができているのですから、これはありがたいことでもあるんです。
その後、暴れるこの子は困っている子だと周りの子どもたちが気づいていくにつれ、暴れる行動はなくなりました。「俺、がまんを覚えたで」と言い残して卒業し、「中学では、笑顔でがまんしてるよ」と友だちが語っていました。
この子は自分で、ハードルを乗り越えられたのですね。
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