「学校で暴れるわが子」を見た母親にかけた"言葉" 「にんじん嫌い」は子どものわがままじゃない?

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「お母さん、忙しいところ悪いけれど、学校に来られる日ありますか? 子どもには内緒で来てくれますか?」と。そして、廊下で「わーっ」と暴れている子どもの様子を本人には気づかれないように、離れた場所からそっと見てもらったんです。

お母さんはその姿にびっくりして、言葉を失ってしまいました。そして、涙をぽろぽろ流しながら「先生、すみません。あんなに暴れて……申し訳ありません」と。

私はすかさずこう尋ねました。

「そんなこと言わせるために、お母さんを呼んだんじゃないんですよ。あのね、息子さんは家では暴れていますか?」

家ではがまんしているんですね

今まではあれこれわがままを言うこともあったそうですが、家が大変になってから、そういうことがいっさいなくなったとのことでした。

家の事情がよくわかっているお兄ちゃんだったこともあり、弟の面倒もよくみてくれて、「暴れることなんてまったくない」「本当にいい子にしているんです」と。

そして、お母さんは絞り出すように、ぽつりぽつりと言いました。

「きっと、すごく家ではがまんしているんですね。そのぶん、学校でこうして暴れているんですね」

お母さんを支える言葉
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私は頷いてから、お母さんに言いました。

「暴れる場所があって、よかった。息子さんの姿、お母さんは知っておいて。家では決して『学校で暴れるな』なんて、言わないでね。でも代わりに、『最近、大丈夫? あんまりしゃべってないけど、お母さんそばにいるからね』と、あの子が安心する言葉、かけてあげて」と。

学校で暴れて、自分を出すことができているのですから、これはありがたいことでもあるんです。

その後、暴れるこの子は困っている子だと周りの子どもたちが気づいていくにつれ、暴れる行動はなくなりました。「俺、がまんを覚えたで」と言い残して卒業し、「中学では、笑顔でがまんしてるよ」と友だちが語っていました。 

この子は自分で、ハードルを乗り越えられたのですね。

木村 泰子 大空小学校初代校長

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きむら やすこ / Yasuko Kimura

大阪府生まれ。武庫川学院女子短期大学(現武庫川女子大学短期大学部)卒業。大阪市立大空小学校初代校長として、障害の有無に関わらず、すべての子どもがともに学び合い育ち合う教育に力を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』は大きな話題を呼び、文部科学省特別選定作品にも選ばれた。2015年に45年間の教員生活を終え、現在は講演活動で全国を飛び回っている。東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター協力研究員

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