ドニプル河東岸以外に反攻作戦の対象地域は、ロシア軍が比較的手薄なアゾフ海北岸の南部とクリミアになるだろう。
南部で狙うのはロシア本土からドンバス州、ザポロジェ州ベルジャンスク、メリトポリに至る鉄道補給路の遮断だ。ここでの攻撃で活用が期待されているのが、長距離砲のほかに、特殊作戦軍が指揮するパルチザン部隊だ。
一方で、クリミアへの攻撃ではクリミア大橋の破壊がメーンになる。2024年4月にアメリカが初めて供与したばかりの最大射程が300キロメートルとなる長射程地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)による橋脚への攻撃だ。
ロシアの出撃基地をうまく叩けるか
このATACMSは「コンクリートクラッシャー」とも呼ばれるほど破壊力が大きい。このミサイルを一度に複数撃ち込めば、橋脚の破壊が可能という。
このような攻撃で南部とクリミアの補給路を同時に通行不能にすれば、その軍事的影響は大きい。ロシア軍にとってウクライナへの重要な出撃基地となっているクリミア半島が、ロシア本土との接続を断たれ出撃基地としての機能を喪失する。
ウクライナが準備を進めている今後の反攻作戦では、F16戦闘機による上空からの援護も想定した「立体的」な攻撃を行う予定だ。F16は2024年夏には欧州諸国から供与が開始される見込みだ。
2023年6月に始めた第1次反攻作戦は、F16戦闘機による上空からの援護なしに行ったことが失敗の大きな要因になった。
では、なぜウクライナ軍は夏に反攻開始を目指しているのか。それは6月、7月以降の重要な外交日程をにらんでいるからだ。
ウクライナが提唱する和平案「平和の公式」について話し合うためスイスで6月半ばに首脳級のハイレベル会合が開かれる。また7月にワシントンではNATO(北大西洋条約機構)首脳会議が開催され、NATOとウクライナとの相互関係をめぐる協議が行われる。いずれかの会合で、ウクライナは侵攻で優位に立っていることを誇示する必要がある。
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