「覇気のない」演説から見えるプーチンの焦り ウクライナは逆に夏の反攻作戦準備に注力へ

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パレード終了後、プーチン氏とショイグ氏は赤の広場で並んで歩きながら言葉を交わす場面もあったが、明らかにショイグ氏の表情は暗かった。結局、今回の演説での「熱量不足」の理由は演説の3日後に判明することになった。

2024年5月12日、プーチン氏がショイグ氏を解任し、安全保障会議書記に任命したのだ。ショイグ氏は大統領の最側近の1人だったが、大統領の命令を実行できなかったため、とうとう見切りをつけたのだ。ショイグ氏の後任には、第1副首相だったアンドレイ・ベロウソフ氏を充てた。

国防相に見切りをつけたプーチン

侵攻開始から2年余り、プーチン氏はショイグ氏の解任をこれまで避けてきた。「特別軍事作戦」が思い通りに進んでいないことを国民に認めることになるからだ。しかし、一向に戦勝を達成できるメドが立たないことから、交代させざるをえなくなった。

ロシア軍はウクライナ東部や北東部で攻撃を続けており、チャシブヤールを含め、一部の要衝が今後、ロシア軍の手に渡る可能性は依然否定できない。

しかし、最近のロシア軍の攻勢には「戦術的に狙いが理解できない行動が多い」とウクライナの軍事筋が指摘する。プーチン氏からの厳命を実現しようと、実現可能性や軍事的効果を顧みずにしゃにむに攻撃しているという。

2024年初めから停止していたアメリカからの軍事支援がこの4月末から再開され徐々にウクライナに到着するのを前に、ロシア軍はウクライナ軍の戦力が整う前に戦果を挙げようと焦って攻撃を強めているからだ。しかし、結果的には攻撃を強めることで、逆に兵力の不足が露呈する皮肉な結果になっている。

こうした情勢について、この軍事筋は「第2次世界大戦当時のスターリングラード攻防戦でのドイツ軍に似てきた」と指摘する。「スターリングラード攻防戦」とは1942年夏から1943年初めまで続いた史上最大の市街戦だ。

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