なぜ岸田首相は「空前の為替差益」を使わないのか 円安ドル高はどうやら転換点にさしかかった

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以上のようなアメリカ経済の状況を踏まえると、筆者が想定していたとおりに、やはり4~6月期以降のコアインフレ率(食料品とエネルギーを除いて算出)は再び落ち着く可能性が高い。また、一時はイスラエルとイランの間に軍事的な緊張関係が高まったが、中東情勢が依然渾沌とする中でも、商品市況では原油の指標であるWTI先物価格が5月に入って再び1バレル=80ドル近辺かそれ以下で推移していることも、アメリカのインフレ期待を落ち着かせる要因になるだろう。

なぜ岸田政権は為替差益を利用しないのか

FRBによる利下げ時期は、インフレの落ち着き具合を見定めることができる9月FOMC会合(9月17~18日)と筆者は想定している。もちろん、利下げのタイミングは今後の経済指標次第で変わる可能性が相応にある。だが、時期が前後したとしても利下げは実行され、パウエル議長が景気への配慮姿勢を見せる可能性が極めて高いのではないか。

このため、アメリカの金利上昇やドル高が再び進む可能性は低いだろう。為替市場で、ドル円相場は4月29日には一時1ドル=160円台まで円安が進むなど大きく動いた。その後2~3回とされる当局の円買いドル売り介入を経て、現在は1ドル=155円を軸とした値動きとなっている(5月10日時点)。今後も為替介入への警戒感やアメリカの経済指標発表などのイベントを消化する過程で、ドル円相場は目先については方向感なく上下しそうだ。

ただ、すでに歴史的な円安が進んでおり、アメリカのインフレが落ち着く中で、さらなる円安ドル高が進む可能性は低い、と筆者は引き続き考えている。

1ドル=160円付近での通貨当局によるドル資産の売却は、絶好のタイミングで実現したのではないか。「ナイストレード」によって、数兆円規模の為替差益が政府資産に追加計上されるとみられる。これを経済政策として適切に利用すれば、日本経済の持続的な成長を後押しできると筆者は考えているが、支持率低下に苦しむ岸田政権はどう対応するのだろうか?

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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