景気はいいが「油断」させないFRBの絶妙バランス 2024年の大統領選挙を前に政治との関係も焦点

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FRB パウエル FOMC
FRBのパウエル議長は高金利環境を長期化させる姿勢を示している(写真:Pete Marovich/The New York Times)
インフレが落ち着き始めているとされるアメリカ。とはいえ、FRB(米連邦準備制度理事会)は9月19~20日のFOMC(連邦公開市場委員会)で年内の追加利上げの可能性をなお示唆し、経済見通しも上方修正して来年も高金利環境を長期化させる姿勢を示した。本当にアメリカ経済はFRBの期待通りに堅調なのか。来年にはアメリカ大統領選挙も控えており、政界は一層経済状況に目を向ける。
今回のFOMCでの決定や今後のアメリカ経済の動向について、大和総研ニューヨークリサーチセンターの矢作大祐主任研究員に聞いた。

高金利状態が1年続くかもしれないサプライズ

――今回のFOMCでは利上げを見送ったものの、アメリカ経済の見通しを上方修正しました。

全体的にタカ派の内容で、株価も下がり為替もドル高・円安に動いた。市場では7月に事実上利上げが終了したとの見方が流れていたものの、6月のFOMCから年内の追加利上げは示唆されており、引き続き年内追加利上げが示唆されたのは想定内のタカ派の内容といえる。

一方で想定外だったのは、2024年の利下げ幅予想を6月時点の1%ポイントから0.5%ポイントに縮小したことだ。市場は0.75%ポイントの可能性は考慮していたほか、利下げ時期について2024年の6~7月だとみていた。0.5%ポイントのみの縮小だと1回当たり0.25%ポイントの縮小と仮定すれば、2024年の11、12月に利下げすれば達成できることになる。高金利状態が今後さらに1年続くというのはタカ派的なサプライズだった。

――実際にアメリカ経済はFRBが予想するように堅調に推移するのでしょうか。

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