「アメリカは利上げ終えた」と期待する市場の甘さ パウエル議長は引き締め余地を残してなお牽制

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FRB パウエル議長 ジャクソンホール
FRBのパウエル議長は追加利上げの可能性を手放さない姿勢を強く見せ続けている(写真:Pete Marovich/The New York Times)

FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレを退治したうえにアメリカ経済をソフトランディング(軟着陸)させることに成功するかもしれないという期待が金融市場で着実に高まっている。物価上昇やその要因となる雇用市場の逼迫が落ち着き始めている指標が相次いで出ており、FRBの利上げは事実上終わったとの楽観論も出ている。

「弱い」経済指標に市場は好反応

8月29日にアメリカ労働省が発表した7月の雇用動態調査(JOLTS)では、非農業部門の求人件数(季節調整済み、速報値)が882万7000件にとどまった。市場予想は950万件だったほか、2021年3月以来の低水準でもあり、予想以上に労働需給の逼迫が緩和していると思われた。

市場はすぐさま反応した。同日は株式市場でS&P500指数が1.5%高となり、6月上旬以来の大幅上昇。ハイテク株中心のナスダック総合指数も1.7%上昇と直近1カ月で最大の上げ幅を記録した。債券市場でも、政策に敏感に反応するアメリカ2年物国債利回りは0.12ポイント低下で4.89%、ベンチマークでもある10年債利回りは0.1ポイント低下して4.12%となった。

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