インフレと金融不安を退治できないFRBの苦悩 年内利下げ期待が漂流、セルインメイに注意も

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FRBは利上げ打ち止めを明確にしなかったが、銀行不安は続く。インフレも高止まりする中、アメリカ景気の後退リスクは高まっている。

FRBのパウエル議長
FRBのパウエル議長は5月3日の記者会見で利上げ打ち止めを明確にしなかった(写真:Pete Marovich/The New York Times)
アメリカのインフレは落ち着かず、景気も底堅い中、5月2〜3日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、FRB(米連邦準備制度理事会)は0.25%の利上げを決め、今後の利上げ打ち止めも明確にしなかった。市場は年内利下げを期待するなど意思疎通がうまく行かない中、5月1日の中堅銀行ファースト・リパブリック・バンク(FRC)破綻など金融不安も続き、景気後退のリスクは高まりつつある。
今回のFOMCでの決定や今後のアメリカ経済の動向について、大和総研ニューヨークリサーチセンターの矢作大祐主任研究員に聞いた。

株式市場は言質が欲しかった

――FRBは0.25%の利上げを決め、政策金利は5〜5.25%と16年ぶりの水準に達しました。今回のFOMCの内容をどうみますか。

バランスをとるのに苦心した印象だ。市場は「今回で利上げ打ち止め」を期待した一方で、インフレはまだ収まっていない。声明文では前回盛り込まれた「追加の政策措置が適切」という表現が削除され、「追加策がどの程度必要か決定する際には、これまでの金融引き締めの累積効果や経済、物価に時間差で与える影響を考慮する」と金融政策のタイムラグについての内容が入った。タイムラグは利上げに慎重を期する際に使用されやすい表現で、市場はFRBが再利上げに消極的になったと当初理解した。

一方で、パウエル議長は記者会見で追加利上げをめぐる決定はデータに基づいて行うとした。国債金利は下がっているので、債券市場は金融引き締めが終わりつつあると冷静に受け止めたようだ。しかし、株式市場はパウエル氏が再利上げに含みを持たせたことにがっかりし、中堅銀行株を中心に売りが広がった。

――アメリカの株式市場がFRBの利上げ停止や利下げへの転換に過度に期待しているのでしょうか。

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