日銀・植田新体制が始動、直面する課題を総点検 10年ぶりの新総裁は政策修正ができるのか
日本銀行のトップが10年ぶりに変わった。4月9日、経済学者の植田和男氏が新総裁に就任し、新体制が始動する。黒田東彦前総裁が行った異次元緩和という金融政策をどう修正し、正常化していくかを期待する声は少なくない。
しかし、3月はシリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米で金融機関の破綻や経営不安が相次いだ。不安ムードは後退しつつあるも、銀行による融資の厳格化など経済に大きな影響をおよぼす信用収縮が起きないか注視される状況にある。世界経済に下押し圧力がかかる中で植田新体制は発足した。
景気後退局面での金融政策
当面の日銀が直面する経済環境をどう見るべきか。いちよし証券の愛宕伸康チーフエコノミストは「FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の急速な利上げを受けて、アメリカの銀行の貸出態度は昨年10~12月時点で急速にタイト化していた」とし、「3月に発生した金融機関の破綻はタイト化に拍車をかける可能性があり、アメリカが景気後退に陥る蓋然性は高まった」と分析。「リベンジ消費やインバウンド需要復活で本格回復が期待される日本経済の足を引っ張るリスクがある」と見通す。
このような経済環境ゆえに新体制発足ですぐさま緩和政策自体の出口に突き進む可能性は非常に低い。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「日銀は当面、3月に起きた金融不安が実体経済にどう波及し、国内景気の減速や物価の見通しに影響を与えるか精査することになる」とみる。
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