なぜ岸田首相は「空前の為替差益」を使わないのか 円安ドル高はどうやら転換点にさしかかった

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実際には前回のコラムでも指摘したように、2024年1~3月にみられた「家賃以外のサービス価格」の上振れが、なぜ起きたかの判断が重要だ。1~3月のアメリカ経済は個人消費が年率+2%超となるなど、引き続き堅調だが、昨年後半と比べれば落ち着きつつある。

賃金上昇に起因するサービス価格上昇圧力が高まっていないならば、高インフレは続かないので、4月以降は再び2023年後半同様にインフレ率は落ち着くと筆者は予想している。

企業の人手確保の意欲低下がハッキリしてきた

4月分のCPI(消費者物価指数)の発表は5月15日にあることから、それまで最新のインフレ動向は判明しないが、5月になってからは筆者の想定通り、アメリカ経済が減速していることを示す重要指標が相次いで発表されている。

まず4月分の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+17.5万人と3月までの高い伸びから顕著に減速した。業種別には、人手不足が続くヘルスケアでこそ大幅な雇用増加が続いているが、娯楽レジャーでの雇用拡大ペースが明らかに鈍化した。また景気動向に敏感な派遣労働者についても減少が続いている。

家計への調査である失業率については、4月3.9%と前月の3.8%からやや悪化、直近の最低値(2023年4月:3.4%)からは0.5%上昇しており、労働市場の需給が緩和している。2022年頃から移民が大きく増えていたことが事後的に判明するなど、アメリカの労働市場の実情を正確に把握するのは難しいのだが、2024年春から労働市場は一段と落ち着いていることは確かである。

この背景には、昨年まで旺盛だった企業の人手確保意欲が低下していることが影響しているとみられる。ISM(全米供給管理協会)が調査する製造業・非製造業の雇用指数など、企業が調査する雇用データについては、直近4月分に特にサービス業において顕著に低下した。

当該調査は単月の振れが大きいのだが、複数の指数がそろって低下していることは、企業は採用を手控えるとともに、人手確保を最優先としてきた姿勢を転換しつつあることを示唆している。

賃金統計に関しては直近の雇用コスト指数が上振れるなど、依然として賃金高止まりを示す指標もみられる。だが、労働市場での人手不足感の緩和をうけて、賃金指数は総じてみれば沈静化しつつある。実際、4月の平均時給は前年比+3.9%とついに4%の大台を割り込んでおり、労働市場の需給緩和と整合的である。

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