いざ運用してみると、満足度もアップ。各自が決めることによる不都合はなく、仮に休日が集中しても弊害がないこともわかった。
昨年9月に中途入社した木村郷子さんは、2人の子どもを持つワーキングマザー。転職した動機のひとつに子育てとの両立があった。
「小1の壁といわれますが、小学校に入るタイミングの子どもには手をかけたいと思っていて、それができる職場に移りたいと考えていました」
前職の通信関連会社では残業や自宅作業も多く、働き続けるのは難しいと感じていた。実はその木村さんが、子連れ出勤に先鞭(せんべん)をつける格好となった。週末を前にしたある日、「明日はどうしても子どもを預けることができない。子どもを会社に連れて来てもいいかと社長に図々しくもお願いしたら、快く承諾してくれました」。
木村さん自身、子どもの頃に父親の職場に連れていってもらって楽しく過ごした思い出がある。「子どもにとって、休日にお母さんと出掛けることは、イベントにもなる」という期待もあった。相談された浅井社長はこのとき、「ベビーシッターを利用すると逆ザヤ(=給与をベビーシッター代が上回る)になることは明らかで、モチベーションが下がってしまうだろうな」と思ったという。
1泊2日の社員旅行に子どもを連れて参加した社員もいる。
「社員旅行と言っても研修の時間もあるし、最初は連れて来ないほうがいいんじゃないと言いました。でも、その社員はシングルマザーで2歳の子どもをいつも両親に預けている。申し訳ないと思ってしまうと言うので、まあいいか」と認めることに。社員旅行は大変盛り上がったそうだ。
いざとなったら子どもを連れていける
同社が子連れ出勤で想定しているのは、毎日ではなくワンポイントで連れてくること。そして、これをOKとする理由は、会社はある種のセーフティーネットの役割を担っていると考えているからだ。
「家族ではないが、縁みたいなものの一端を担っている感覚がある。自分でとことん手を尽くすけれど、いざとなったら会社の誰かが手伝ってくれると思えるか思えないか。この違いは大きい。頼れる親類縁者もいないし、仕事はあるしという状況で、どうしようもなかったら子どもを会社に連れていけばいいやとなれば、安心感につながる。会社ではみな四六時中、根を詰めて仕事をしているわけではないし、リフレッシュも必要。会社側も子どもがいることを活用すればいい」
同社の勤務時間は9時から18時だが、それぞれのスケジュールに合わせて調整が可能となっており、事実上のフレックス勤務となっている。家や外のカフェなど、仕事をする場所は問わない。
「緑のおばさんのようなPTAの仕事をやって10時に出社することもあるし、本読みのボランティアもできる。子どもと一緒にいたいとき、イベントのときにいてあげられる。転職してよかったと思います」(木村さん)
不動産ビジネスにおいても「いったんゼロにして考える」ことをモットーとしている同社。柔軟な働き方を実践できるのは、そのモットーが大きく貢献していることは間違いない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら