「もしトラ」へ備え?習近平氏「5年ぶり訪欧」の思惑 なぜフランス、セルビア、ハンガリーだったのか
セルビアでは中国企業による複数の大規模インフラ建設プロジェクトも進行しており、事業費は総額で20億ユーロに上る。
首都ベオグラードと国境を挟んだ隣国ハンガリー・ブダペストを結ぶ高速道路をはじめ、地下鉄、熱供給施設などのインフラ整備で、ハンガリーとともに中国資本は重要な存在となり、確実に一帯一路に組み込まれている。その後に訪れたハンガリーでは親ロシアのオルバン首相と会談し、さらなる互恵経済関係と新型国際関係のための手本を確立した。
混乱が予想される欧州を中国が利用?
北大西洋条約機構(NATO)はアメリカ依存を脱し、欧州の自律的な安全保障強化に舵を切っている。イギリスは2030年までに国防予算に750億ポンド(約14兆4300万円)を追加投入すると約束し、NATOの加盟国にも同様の積み増しの圧力をかけている。
一方、EU加盟国のスペインとギリシャは自国防衛懸念から、ウクライナへの防空システム供与を先月、拒否した。アメリカ依存を脱したい欧州だが、加盟国の台所事情も防衛能力レベルも大きく異なる。
トランプ氏が再選されれば、NATOから加盟国への拠出金増額要求は必至と見られる。トランプ氏は2月10日の演説で、自身が在任中にNATOの一部加盟国に対し、軍事費を適切に負担しなければロシアが攻撃してきてもアメリカは支援せず、むしろ「好きに振る舞うようロシアをけしかけてやる」と発言した。NATOのストルテンベルグ事務総長は「すべての加盟国の安全保障を弱体化させ、アメリカと欧州の兵士を危険にさらす」と不快感を露わにした。
そんな混乱が予想される欧州に対して、中国は混乱を逆に利用しようとしている。中国からの安価な輸出や域内安全保障をめぐる懸念によって、EUが貿易調査に乗り出したことから、中国はアメリカと足並みをそろえることへの不快感を示している。今回の習氏の訪欧は、中国の巨大な経済から目を背けるべきではないと説得するためでもあった。
中国は対米貿易戦争で苦戦し、中国国内の経済も足踏みする中、多角的外交戦略で一帯一路を進めたい構えだ。特に弱小国から切り崩していく戦略や大国とは対話重視でグローバルプレーヤーとして存在感を発揮し、「もしトラ」後の世界に対して着実に布石を打ちたい思惑が欧州歴訪でうかがえる。
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