「もしトラ」へ備え?習近平氏「5年ぶり訪欧」の思惑 なぜフランス、セルビア、ハンガリーだったのか

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一方、フランスにとっては不公正な貿易慣行の解消、ロシアとの「無制限のパートナーシップ」の転換に期待していたが、習氏の口からは、コニャックに専制関税を課さないこと、マクロン氏が提案しているパリ五輪・パラリンピック期間中のウクライナ紛争の停戦に支持を表明するにとどまったが、そもそも停戦はロシア次第で可能性は低い。

またウクライナ問題に関しては、中国はロシアに武器を供与していないこと、そして軍事品輸出の厳格な管理を公に表明していることから、「ウクライナ危機を利用して責任を押し付け、第三国を中傷し、新たな冷戦を扇動することにわれわれは反対する」(習氏)と従来の主張を繰り返すだけだった。

セルビアとの関係は一帯一路の打開策

フランスの次に訪問したセルビアは、旧ユーゴスラビアの中心国家だったが、東西冷戦終結後も周辺国との対立が絶えない国だ。2014年にEU加盟候補国となっているが、成熟した民主主義や人権重視のハードルが高く、EUへの加盟を果たせていない。

セルビアの直接投資流入額に占める中国からの投資額は2020年以降、増加し続けており、2020年は5.3億ユーロ(約870億円)、2021年は6.3億ユーロ、2022年には13.8億ユーロへと急増し、2023年には10.9億ユーロに減少したが、2024年には増加に転じると見られている。

習氏はセルビア訪問中、昨年10月に締結にこぎつけた中東欧初となる中国と自由貿易協定(FTA)を2024年7月に正式発効することをセルビアのブチッチ大統領と確認した。そのため、中国からの投資流入額は確実に増えると予想される。中国がEU未加盟の西バルカン諸国と締結する初めてのFTAは、先細りの一帯一路の打開策ともいえるものだ。

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