JR東日本が変えた「ジャカルタ通勤鉄道」の10年 初代現地出向者に聞く海外鉄道ビジネスの現場
――人的支援にはKCIのヨナン総裁からのプッシュや要望もあったのでしょうか。
ヨナン総裁はもともと日本に詳しく、今でも親しくさせていただいている。日本から学びたいという考えをお持ちの方だった。(人材の送り込みは)双方からの意見ではあるが、ヨナン総裁からの話もあったのを覚えている。
(海外鉄道事業ユニットマネージャー・松田敏幸氏:それ以前から提案はしていて、この会議の場でヨナン総裁からぜひお願いしたいという方向性が出てきた。)
それで、私はインドネシア語も何もできなかったのだが、行くぞということになって。会議の後、日本に帰ってきて準備にあたったということになる。
「現場の声」が通りにくい環境を変える
――現地に着任されて最初の印象はどうだったでしょうか。当時は元埼京線の車両のオーバーホールが始まりだした時期で、純正品ではないブレーキシューが付いていたことなどが私は印象に残っています。どのようなところから手を付けていったのでしょうか。
インドネシアの方々は、やる気はすごくある。日本よりも清掃などをしっかりされている。マンスリーメンテナンスでも1カ月に1回、台車や床下をきれいに洗っている。メンテナンスでの清掃は非常に大事で、洗っていると亀裂があったり、油漏れがあったりというのがわかる。やれるところはすごく努力されている。
ただ、やり方を知らないとか、道具がない、材料がないといったことがある。現場にはわかっている方も多々いるが、それが会社一体として部品を買わなければいけないとか、どのタイミングで買わないといけないのかといったことはご存じないというケースがあった。さらに言うと、なかなか現場の声が通りにくい状況があった。
しかし、現場第一主義、現場に足しげく通えと私はJR入社以来叩きこまれているし、やはり答えはすべて現場にある。そういった中で、現場の声をいかにしてKCIの中の本社、財務部門、調達部門に伝えていくかというところを大事にした。スマホで写真を撮りまくって、現場でこんなことが起こっているよと本社、財務部門などに共有し、ディレクタークラスにも伝える。
さらに、その前段として大事だったのが、事後保全から予防保全に変えていくことだった。故障が起こってから取り替えるのではなく、起こる前に、運用中に壊れないようにするというところからスタートさせてもらった。まず仕業検査、デイリーメンテナンスから手を付けた。インドネシアでも毎晩デイリーメンテナンスはしているが、2人で同時に動いて一緒にこういう動きをすれば一筆書きでこんなことが全部チェックできるよ、といったことを伝えて毎晩やってもらう。
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