庶民は買えない!?マンション高騰は続くのか? 今後のインフレで日本の不動産はどうなるのか

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ところが現在、この算式の分母にあたる投資総額は土地代も建物代も上がりっぱなしの状態で、下がる見込みがありません。つまり、投資利回りはどんどん落ち込んでいる状況です。ということは、満足できる利回りを確保するには、分子の部分に相当する賃料が上がらなければなりません。

マンション販売において、上昇する販売価格を吸収するには、低金利政策や税制優遇など行政による後押しだけでは限界があり、一般国民の給与など収入が上がることで手が届くようになることが必要です。また賃貸では、高い賃料を喜んで払ってくれるテナントが増えれば、利回りが改善して成立します。

今後ますます強まる世界的なインフレ傾向

現状では、投資家は賃料上昇期待を待ちながらも、売却時の売却益に重きを置いて投資を行っているはずです。そして、いずれ賃料収入も着実に上がると見込んでいるがゆえに投資を決断しているとも言えます。そうでなければ、そもそも投資意欲が湧くはずがないからです。

このような状況は何を示唆しているのでしょうか。

率直に言えば、今後のインフレです。世界的なインフレ傾向は今後ますます強まり、日本とて例外ではなくなります。モノの値段が上がるということは、やがて給与や賃料も上がることを意味します。

ただ、上昇にはタイムラグがあり、分母(投資総額)の上昇に分子(賃料など)の上昇が追いつかない期間中は、前述のような開発計画の縮小や延期、棚上げといった事態を覚悟しなければなりません。

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この先に、これからの日本社会の行く末があります。つまり日本人全員の給与、収入が上がるわけではありませんし、新築マンションを全員が買えるようになるわけでもありません。所得格差、エリアや街間の格差、ライフスタイルの変化、価値観の変化などの変数が影響を及ぼしていくはずです。

日本経済が順調に成長を続けることができれば、インフレを克服できますが、給与など収入が上がらずに、モノの価格だけが上昇するスタグフレーションになると、社会の混乱は避けられないものとなります。

現状のマンションマーケットは今後の調整期間を前提にして、値上がり期待という投資家の思惑と、インフレに支えられて上昇を続けています。

これに連動して、一般国民の収入が賃上げなどで上昇すれば、やがて建設費との釣り合いが取れて、郊外を含めて新築マンションの供給が復活してくるでしょう。建設費の値上がりが世の中全体のインフレによって吸収されていくからです。

牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

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まきの ともひろ / Tomohiro Makino

1959年生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。また全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立。代表取締役を兼務。著書に『不動産の未来』『負動産地獄』『空き家問題』『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)など。

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