社会保障は金持ちから貧困層への再分配にあらず 主目的は「消費の平準化」と「保険的再分配」

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医療費の50%以上、介護給付費の96%は70歳以降で使い、年金給付費の83%ほどは老齢年金である。医療、介護、年金保険はこれら高齢期に集中する生活費を若いときから負担しておいて、将来になったらそれを使うという形で支出を平準化していることになる。これが消費の平準化(consumption smoothing)であり、社会保障という所得再分配制度が担う主な役割である。社会保障というと、一部の人は「自分とは関係のない、困っている人へのほどこし」というイメージを持つようだが、社会保障給付費の約9割は社会保険であり、この社会保険の機能は所得再分配によって、われわれの消費を平準化することである(生活保護など公的扶助は社会保障給付費の3%程度)。

どうも世の中の人たちは、社会保障が行っている所得の再分配というのは、高所得者から中・低所得者への「垂直的な再分配」が第一の目的だと勘違いしているようである。しかしながら、今の時代、それは完全な間違いである。社会保障の給付費の9割を占める社会保険制度が行っている所得再分配を重要な順に並べると次の3つになる。

1. 今必要でない人から今必要とする人への「保険的再分配」
2. 必要でないときから今必要なときへの「時間的再分配」
3. 所得の高い人からそうでない人への「垂直的再分配」

社会保険が垂直的再分配を行っているのは、賃金比例で拠出して、必要に応じて給付を受けているがゆえの、結果としての垂直的再分配の趣が強い。社会保険の第1、第2の目的は、保険的再分配、時間的再分配による消費の平準化である(1と2の重要さは同程度であり、3の重要さはそれらより低い)。

賃金に比例して応能負担の原則で労使折半により拠出し、個々の家計の必要原則に基づいて給付を行うことにより、消費が「必要な人・とき」へシフト(平準化)する。この再分配により、貧困に陥ることを防ぐ防貧機能が果たされ、中間層を中心としたほとんどの人たちの生活が守られるわけである。ベストセラー『21世紀の資本』を著した経済学者ピケティの言葉を借りれば、「現代の所得再分配は、金持ちから貧乏人への所得移転を行うのではない」ということになる。

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