社会保障は金持ちから貧困層への再分配にあらず 主目的は「消費の平準化」と「保険的再分配」

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ここでは今、所得がみんなに平等に分配されている社会を想定しており、そうした平等社会では、高所得者から中・低所得者への垂直的な再分配はない。あるのは所得が同じ人たちの間での水平的な移転のみである。しかしそうした水平的な所得移転のみからなる新しい再分配制度であっても、子ども・子育ての当事者にとっては望ましい制度に思えるのではないだろうか。

野党や一部の有識者たちは猛反発している。中には、今回の支援金を医療保険料の流用と呼ぶ者もおり、その自説を拡張して、これからもそうした流用が際限なくなされるようになるという者もいたりする。

後述するが、支援金の財源調達方法は、賃金のサブシステムを構築する以外に使うことができるわけがない。そうしたこともわからない日本の民主主義、いわゆる有識者からなる言論界というのは、その程度のものと諦めて眺めておくしかないのだろう。

今はとにかく、「今回の支援金騒動の主役である政党、そして彼らを代弁するさまざまな応援団が、かつての年金騒動時とほぼ同じ懐かしい顔ぶれである様子を眺めると、歴史が繰り返されているように見えるものである。議論の経緯をみんなで眺め、誰が何を言っているのかをしっかりと記憶しておくことは、日本の民主主義を進化させるためにも、意味のあることのようにも思える」(「子育て支援めぐり「連合と野党だけ」猛反発のなぜーー 騒動の主役は『年金破綻論全盛時と同じ顔ぶれ』」 より)。

キーワードは消費の平準化

どうして子どもを育てている世帯は、給付の受け取りと支援金の拠出との差であるネットの受取額が大きなプラスになるのか。それは、新たな支援金制度が、社会保障の基本かつ最重要な機能である消費の平準化(consumption smoothing)を果たすことになるからである。

このあたりの話に触れていた「社会保険が子ども・子育てを支えるのは無理筋か 『提唱者』権丈善一・慶応大教授が寄稿(上)」に書いていたことをおさらいしながら、説明しておこう。

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