「保存樹木だったケヤキ」はなぜ伐採されたのか 1本の大木が問いかける街づくりに欠けた視点

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方、「日本の自治体の多くには『開発=まちを発展させてくれるもの』という意識があり、開発事業者に対して一方的に協力・支援する傾向がある。そこでは住民の意見は『開発を妨げるもの』とされるので、結果として開発がブラックボックスのまま進んでしまうのです」(窪田教授)。

ニューヨークの事例では、住民が合意形成に関与できる仕組みはあるが、その前提となるのはまちに誇りを持つ市民の「思い」だ。せっかくアクセスの権利とルートがあっても、住民が声を上げなければ状況は変わらない。

「行政はあくまで住民の生活を助ける主体であり、行政が主役ではありません。その行政を動かし、保存樹木の指定や指定解除に対して住民参画の仕組みをつくるためにも、まずは住民の側が声を上げる必要があります」(窪田教授)

まちづくりにおける「文化」の醸成が重要に

窪田教授がそのカギに挙げるのは、まちづくりにおける「文化」の醸成だ。「自分たちの地域の住環境は自分たちで守っていこう、という文化を、その地域の中で育んでいくことが重要です」(窪田教授)。

4月26日、大ケヤキの木はマンション事業者によって“計画どおり”伐採され、姿を消した。今回の問題を提起した飯田さんは今、大きな喪失感を抱えている。

伐採されるケヤキ(写真:飯田さん提供)

「正直にいうと、自治体や開発事業者から面倒くさがられているだろうな、と思うこともあります。でも、私が声を上げなければ、あの場所に確かにあったケヤキの木が本当になかったことにされ、人々の記憶からも消えてしまう。これ以上同じことを繰り返さないためにも、私なりに発信する活動を続けていきたいと思います」(飯田さん)

(写真:飯田さん提供)

日本では今後、空き家や相続問題、土地や建物の老朽化などもあり、各地で大小さまざまな開発が行われるだろう。多くは所有者や開発者の意向にそうことは「仕方ない」のかもしれないが、住民側も自らが住む地域に主体的に関わる意識を持つ必要があるのではないだろうか。

堀尾 大悟 ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほりお だいご / Daigo Horio

慶応大学卒。埼玉県庁、民間企業を経て2020年より会社員兼業ライターとして活動を開始。2023年に独立。「マネー現代」「NewsPicks」「新・公民連携最前線」などで執筆。ブックライターとしても活動。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事