「電通でも残業60%減」を実現したシンプルな原則 付け焼き刃の対策より「経営者の覚悟」が大切
ただしこの工程一覧表をつくる際には、聞き取り調査を徹底する必要がある。そこで、各部門や各専門職の「主」のもとに経営者が足を運んで頭を下げたことが活きてくる。
「主」たちの全面的な協力があれば、多くの社員が納得する調査票ができあがり、記入もスムーズになる。しかも調査が会社からの押しつけではなく、その設計に「主」が参加しているとわかれば、現場の人々も調査に協力的になってくれるに違いない。
著者によれば、この調査票の作成には少なくとも2カ月ほどの時間が必要となるようだ。当然のことながら、そこは時短してはならないポイントだが、とはいえ2カ月以上かけるべきでもないという。調査票づくりに凝りすぎると、工程のレベルがどんどん細かく立っていき、調査の目的を見失ってしまうからだ。
つまりは調査する工程のレベルを細分化しすぎないことが重要で、そのためにも2カ月で終わらせるのが理想的だということである。
各業務工程を「棚卸し」する
調査票ができあがったら、次は「工程の棚卸し」、すなわち調査票への回答である。この回答作業には2営業日程度、場合によっては2週間程度の時間が必要とされるため、社員から「時短をしようと呼びかけておきながら、余計な仕事を増やすなんておかしいじゃないか」と不満や疑問が出るかもしれない。
しかし、その集計結果を目の当たりにすれば、必ず社員の意識は変わるはずだと著者は強調している。だからこそ、それを信じて回答を促すべきだろう。
著者が籍を置いていた電通では、会社が不退転の覚悟で全社員6000人以上の調査を断行したという。その過程においては不満や疑問が各部門から上がり、事務局に対してもさまざまな意見が寄せられたようだ。
だが1カ月後にどうにかほとんどすべての社員の工程の棚卸しが終わり、その結果が明らかにされると、社内の空気は大きく変わったそうだ。
ご紹介してきたのは本書が提唱する「時短」メソッドの一部に過ぎないが、それでもこうした地道なプロセスがいかに重要かはおわかりいただけるのではないだろうか?
先に触れたように、時短をしようとなると「時短のノウハウ本」が勧めるような手段に頼ってしまいがちだ。たしかにそれらもムダではないだろうし、一時的には改善される部分もあるかもしれない。しかし、やはりそうた手段は結局のところ付け焼き刃でしかない。
しっかりと、本当の意味での時短を推進したいのであれば、本書のような視点を持って臨むことが重要なのではないだろうか?
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