日本企業の株価が海外より上がらない「根本理由」 アクティビスト丸木氏、経営陣に苦言を呈する

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以前、私はある別の経営者の方に「どうして現金をたくさん持っているんですか」と伺ったことがあります。その経営者は正直な方だったのでしょう、「だって楽じゃないですか」と即答。「もし本業が傾いても、現金をたくさん持っていれば安心でしょ」とのことでした。

また、アパレル事業のある経営者の方は、株主総会で「本業が不安定なので、賃貸用不動産を保有しているとPL(損益計算書)とキャッシュフローの面で事業継続性の向上にプラス」と堂々と答えていました。本業の経営に自信がないから、賃貸用不動産を保有していれば安心、ということらしいです。

「失敗に備え資産を保有」する日本の経営者

株主が経営者に期待するのは、そういうことではありません。将来、経営に失敗することを予定し、それに備えて余計な資産を保有しておくのはプロの経営者のすることではありません。

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余計な資産を保有せず、本業に必要な資産だけを保有して有効に活用し、つまり資本の効率性を高めて、会社の業績を上げること、そして株価を引き上げることです。

「本業が不安定だから」と言う前に、どうやってその本業を成長させられるのか経営方針を検討、改革を実行し、今まで以上のリターンを追求するのがプロの経営者というものでしょう。

「それができないなら、できる方に代わってください」と、経営者の方に直接申し上げたこともあります。

投資家として言えば、ローリスクでローリターンを求めるなら、国債を買えば済む話です。リスクを取って企業の株を買う以上、相応に高いリターンを求めているわけです。

経営者にそれに応える気がないとすれば、誰がその会社の株を買おうと思うでしょうか。日本企業の株価がなかなか上がらなかった根本理由は、ここにあると思います。

丸木 強 株式会社ストラテジックキャピタル代表取締役

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まるき つよし / Tsuyoshi Maruki

1982年東京大学法学部卒業。野村證券株式会社入社後、主に日本企業や政府関係機関の資金調達案件の引受、大型民営化企業のIPO、邦銀への資金注入に際しての政府関係機関のアドバイザー、米国企業の日本の上場子会社に対する公開買付代理人などの業務を担当。1999年、株式会社M&Aコンサルティング(後のMACアセットマネジメント)の創業メンバーの一人として、日本初となるアクティビストファンドの運用に従事。2012年に株式会社ストラテジックキャピタルを設立、代表取締役に就任、同年12月からアクティビスト戦略のファンド運用を開始。国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)メンバー。

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