たしかに、2011年にはウォールストリートでデモが起きるなど、米国では株価の上昇の恩恵を受ける株主、巨額の株価連動報酬を受け取る経営者だけが豊かになり、経済格差が拡大したとして問題になっていました。
一方日本では、やっと株主を大事にしようとする機運が生まれつつあるとは思いますが、株主が「偏重」されるにはほど遠い状態です。
その何よりの証拠が、ここ30年にわたる株価の低迷です。
例えば米国のダウ平均株価は、1990年時点で3000ドル弱。それが今や3万ドルをはるかに上回っているので、ざっと10倍以上も伸びています。配当込みだと約30倍です。
それに対して日経平均は、ようやく1989年末のピーク(3万8915円)を超えたとはいえ、配当込みでも1.4倍程度であり、中長期で見れば米国をはじめ欧州やその他新興国の高騰ぶりに比べれば微々たるものです。
日本だけが取り残されていた
これは日経平均ではなく、各国の時価総額で比較しても、あるいはGDP成長率で比較しても同様です。成長を続ける世界経済の中で、2023年までは日本だけが取り残されたわけです。
もちろん、バブル崩壊の後遺症、金融・財政政策や円高など経済環境の影響もあったでしょうが、上場企業の経営者による株主偏重どころか株主軽視も大きな要因だったと思います。
もし株主がもう少し重視されていれば、日本企業はもっと利益を上げ、資本効率も良く、株価指標のみならず、日本経済も成長していたはずです。
株主以外のステークホルダーを満足させるだけでいいなら、とりあえず会社を潰さなければ十分です。現状維持の経営で、わずかでも黒字を計上できれば、給料や代金の支払いが滞ることはありません。これなら経営者も楽なはずです。
実際、「うちはずっと黒字だからいい会社なんです。存続させることが第一です。何がいけないんですか」と堂々とおっしゃる経営者の方もいました。
こういう意識だから、株主に報いようとも思わない。未来に向けた投資や研究開発にも消極的か、投資していてもその投資リターンをよく考えていない。代わりに現金や有価証券や不動産を貯め込もうとする。
その当然の帰結として、PBR(株価純資産倍率)は1倍以下で放置されるわけです。
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