個別指導塾でブラックバイトが横行するワケ 苛烈な勤務体系に学生講師が悲鳴を上げる

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塾側にも言い分がある。「コマ給は、業界に昔からある、一般的な賃金体系。予習や授業後の質問対応も含めて、一つのサービスという感覚」(業界団体の幹部)。

従来型の集団指導塾の講師であれば、一度に教える生徒が多いうえ、問題の出し方などに独自のノウハウが必要なため、給与水準は高い。だから拘束時間で換算しても、最低賃金を割り込むことは少ない。

これに対し、個別指導塾では、1人の講師が1コマで教えるのは1~3人程度。生徒に問題を解かせ、解説をするだけなので、それほどのスキルも要しない。当然ながら、給与水準は低くなる。

前出の業界団体幹部はこう代弁する。「競争が厳しくなる中、勝ち残るにはコストを抑えるしかない。だから、体育会的なノリで過度な要求をしてしまうのではないか」。

競争激化で講師にシワ寄せ

業界の現状について、塾大手の幹部は「個別をやっていない塾がないほどの状況」と明かす。集団型に比べ小ぶりな設備で済むので、出退店は容易。少子化が進む中、集団と個別を併設し、両方を受講してもらえば、生徒単価も上がる。一方、苦手分野を克服できたり、時間の調整に応じてくれたりと、生徒と保護者にとってもメリットは多い。

需給のニーズが合致したことで、2000年代前半に3000億円台前半だった個別指導塾の市場規模は、直近で4000億円台前半まで成長した。だが、ここ数年は都市部を中心に飽和状態に陥り、市場規模も頭打ち。こうした中で、講師の給与にシワ寄せが来ている。

「今は時給の概念が一般化しており、拘束時間に見合った体系にする必要がある。ただ、個別には1対1の塾もあれば、1対3の塾もある。業界として足並みをそろえにくい」(前出の業界団体幹部)

6月末から7月上旬にかけて、ユニオンと塾3社の団体交渉が始まる。“学びの場”の名にかけて、病巣を切り出すことができるか。

「週刊東洋経済」2015年7月4日号<6月29日発売>「核心リポート04」を転載)

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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