「胡錦濤派」vs.「鉄道省」 中国新幹線事故の裏に権力闘争

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7月23日に中国・温州で発生した高速鉄道の衝突事故。鉄道省の発表では死者30人台だが、乗客数と比べると少ない。原因は「落雷」で天災としていたが、現段階では「信号設備に重大な欠陥があり、落雷で故障して誤作動を起こしたため」と、人災も認めつつある。

中国政府の情報統制や隠蔽体質は相変わらず。が、「胡錦濤政権の対応がいつもと違う」と、北京在住のテレビ記者は打ち明ける。メディアを管理する中央宣伝部から「独自報道を控えよ」といった指示は来ているものの、「その対応はいつもより緩く、ネットへの統制も厳しくない」。

実際に発生現場の地元・浙江省のテレビ局は、通常番組を中断し緊急特番を開始。鉄道省の記者会見では、報道官の対応にいらだつ記者たちの様子がそのまま流された。“鉄道省憎し”という国民の感情を背に、メディアの報道も普段より自由さを感じる。

この裏には、「胡錦濤派と鉄道省との対立がある。今回の事件を利用して、鉄道省を弱体化させようという意図が見え隠れする」と、アジア経済研究所の佐々木智弘・研究員(上海在住)は指摘する。

伏線はあった。2011年2月に、劉志軍・鉄道相(当時)が突然解任。理由は「重大な規律違反」で、具体的には「愛人18人、収賄127億円」と伝えられた。しかし当初から「汚職だけが解任の理由ではない」という声も多かった。

それは、劉氏は江沢民・前総書記が抜擢し、高速鉄道計画を主導してきた人物だから。「江沢民派を排除し、莫大な利権を握る鉄道省を、現政権が掌握するための布石だった」(佐々木氏)。

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