「胡錦濤派」vs.「鉄道省」 中国新幹線事故の裏に権力闘争

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行革挫折の意趣返し?

そうしたい理由は十分にある。09年3月に「大部制」と呼ばれる行政改革によって、胡錦濤政権は、鉄道省を航空や高速道路とともに「交通運輸省」へ統合する計画だった。この統合の主役が次世代リーダーとされる、李克強・副首相だった。

ところが、莫大な鉄道権益を握る鉄道省としては、統合の動きを封じ込め、利権を守りたい。そのため江沢民氏系の長老を使い、統合を御破算にした経緯がある。李克強氏のメンツは潰されたのだ。

指導部の世代交代という12年秋の党大会を控えた今。今回の事故をうまく処理すれば、鉄道省の権益を胡錦濤派に導くことも考えられる。それには、メディアの力を借りた江沢民派の排除が必要、ともくろんでもおかしくない。

中国の高速鉄道プロジェクトには、日本企業数社も参入している。だが、共産党の権力闘争の象徴ともいえる事業だけに、政治的リスクは高い。事業の進め方にはさらなる慎重さを要しよう。

(週刊東洋経済2011年8月6日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
photo:Thyristorchopper CC3.0 BY-SA

 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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