黒田日銀総裁と高橋是清の「類似点」とは? ストラテジストの市川眞一氏に聞く(後編)

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先ごろの大阪都構想を巡る大阪市の住民投票は、日本の政治において重要なことを示唆している。不在者投票を含まないNHKの出口調査を見ると、20代から50代までは賛成が上回っていたものの、60代で均衡に近づき、70代では反対派が大きく上回っていた。結果は、1万数千票の僅差で反対が上回った。

憲法改正の際にも国民投票が行われるが、大阪市のケースは非常に重要な参考例ではないか。高齢者の人口が急速に増加している上、前回の衆議院選挙を見ても、20代の投票率が32%に留まったのに対し、60代は68%と正にダブルスコアだった。参政権を18歳まで引き下げるものの、結局、計算できるのは確実に投票に行く高齢者だ。安全保障政策の見直しに懐疑的な意見の多い高齢者に配慮すれば、経済政策では高齢者には優しい政策を選択することになるだろう。

来年夏の参院選を意識して財政健全化は先送り

――経済財政諮問会議の案では、潜在成長率が0%台前半の日本において、実質成長率2%、インフレ率2%を前提に18年度になるまで歳出削減もしないとし、10%を超える消費税率も首相自ら封印してしまいました。

この内閣府の見通しは、成長率の前提が甘く、成長による税収の見積りもかなり過大なのではないか。2014年度の税収が21年ぶりに54兆円に迫るとは言え、前年度と比べた増収の半分以上が消費税率の引き上げによるものだ。法人税も伸びてはいるが、海外現地生産比率が高まっているため、企業業績は過去最高の利益水準でも、1990年までのような増収は期待できない。また、企業業績は景気に大きく左右されるため、上げ潮的な発想だけでは、財政再建が機動性を欠くことになる。

自民党の稲田朋美政調会長は、財政再建に関する同党の特命委員会委員長として、歳出削減を頑張って主張している。これは、非常に異例なことではないか。これまでの歴史は、与党側が景気優先、財政拡張を主張し、政府側の財政再建論と対立する構図がほとんどだった。今回は、政府側がむしろ上げ潮政策を唱えている。

国家安全保障法案が難航していることもあって、来年の参院選の前に景気が落ち込んだり、株価が下落したりすることに対して、安倍政権は極めて警戒的なのだろう。自民党が次の参院選で前回並みの65人を当選させれば、憲法改正が視野に入る可能性は強まる。財政再建の優先順位は高くないのではないか。

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