2015年は、おそらく「最後の円安の年」になる 「円売り余力」が復活、年内はドル高円安方向
年内のドル円相場に関しては需給面、金利面から見て円安シナリオは継続と考えたい。
確かに円安シナリオにとってのリスク要因は、そこかしこに見え始めている。例えば昨秋からの貿易収支の改善はその1つである。しかし、需給面に目をやれば、後述する対外証券投資の存在がある。これを踏まえると、貿易収支の改善は、現段階では「売り圧力の後退」程度の話であり、「買い圧力の増大」と言えるほどの状況ではないだろう。原油価格急落を受けた輸入減少が貿易収支を改善させる構図も恐らく今年の1~3月期がピークであったと思われ、暦年で貿易黒字を確保するまでの展開は考えにくい。
むしろ、需給の話をするのであれば、年内は日米の金融政策格差(要するに日米の金利差)や日本の政策要因などを背景に対外証券投資の加速、雑駁に言えば「日本人による円売り」が基礎的需給環境を円売りへ傾斜させていく展開に注目したい。確かに貿易収支ひいては経常収支は改善傾向にあるが、これを補って余りあるだけの対外証券投資が出ることで、円相場全体としては円売り超過の環境が継続する、というのが年内に関する筆者の基本的な見立てである。
投機筋の円売り余力は復活
年内とは言わず、ごく目先に着目してもドル円相場の上振れ、つまりドル高リスクは感じる。
短期的な相場動向に関してはIMM通貨先物取引に現れる投機筋の動向などが注目されるが、同取引データによれば、今年4月下旬には円売りポジションがいったん中立まで調整されている。具体的には、4月28日時点の同取引における円売りポジションは金額(筆者試算)にして5.73億ドルと2012年10月16日以来の低水準を記録した。アベノミクスの起点を野田佳彦首相(当時)が安倍晋三首相(現在)に解散を持ちかけた2012年11月14日とした場合、投機筋の円売りポジションは初めて振り出しに戻ったわけである。
しかし、こうしたドル買い円売りのポジションが巻き戻された(要は円が投機的に買い戻された)にもかかわらず、この過程でさほど円高進行が見られなかった。これは投機筋における円の先安観が後退する一方、「安いドル」を欲する主体は依然多く、需給面では円売り優勢の状況が続いていることの証左と思われる。結局、冒頭述べたように、確固たる円売り需給が投機筋の買い戻しを相殺しているのである。
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