いろいろお騒がせのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉は、いよいよ大詰めの局面を迎えている。競馬で言えば、すでに各馬は最終の第4コーナーを回った。競輪で言えば、最後の1周を知らせるジャンが鳴っている。「差せ!」と叫ぶか、「そのまま~」と祈るか。残された時間はそう長くはない。
交渉がまとまりそうなら、5月23日からフィリピンで行われる予定のAPEC貿易相会合に、追加する形でTPP閣僚会合が急きょ開催されるだろう。そこから「大筋合意」への流れが生じるはずである。
ぶっちゃけ、コメは大きな問題ではない
フロマン米通商代表と甘利明TPP担当大臣が、マラソン協議を続けてきた日米交渉も、コメと自動車部品関税以外はだいたい片付いている。なあに、ぶっちゃけコメなんてたいした問題ではないのである。
なにしろ今の為替レートだと、日米のコメに内外価格差はないに等しい。「TPPが通ったら、アメリカはコメを増産して対日輸出してくる!」と懸念する声もあるが、肝心のカリフォルニア州は渇水に苦しんでおり、当面はコメを増産するどころの騒ぎではない。むしろこちらが増産して、アメリカ人に旨い日本のコメを食わせてやりたいくらいだ。
カギを握るのは米議会である。4月に超党派の議員がTPA(貿易促進権限、旧ファストトラック)法案を提出した。これが通れば、オバマ政権の交渉力が一気に強化される。
逆に言えば、合衆国憲法は通商交渉の権限を議会に与えているために、これがないと議会が後から何度でも「交渉のやり直し」を命じることができてしまう。だから交渉参加国は、このTPA法案が通るかどうかを注視している。TPAがなかったら、一切譲歩はしたくない。逆にTPAさえ通れば、実質合意が現実味を帯びてくる。特に、もっとも難関とされる日米合意が見通せるのであれば、ほかの問題は妥協可能に見えてくるだろう。
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