2015年は、おそらく「最後の円安の年」になる 「円売り余力」が復活、年内はドル高円安方向

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良い意味でも、悪い意味でもロジカルに動かないことが黒田日銀の強みだとするならば、為替予想において日銀の政策運営はとりあえず「置き」で処理するしかない。

2016年はより複雑なシナリオが必要に

なお、年内は上述のような理解に立つとしても、来年以降は違ったシナリオが必要かもしれない。日本からの対外証券投資はあくまで日米の金融政策格差があってこその話だが、米国におけるドル高のノイズは足元で明らかに強まっている。すでに「対話」を始めてしまった以上、FRB(米国連邦準備制度理事会)は年内1回の利上げには踏み切るだろう。しかし、1回利上げに着手したその瞬間から米金融政策の焦点は「いつやるか」から「何回できるか」にシフトするはずだ。

残念ながら「何回できるか」という点に関し、自信を持つ向きは多くない。そう考えると、来年のドル円相場見通し作成においては、日米の金融政策格差という大前提を再検討する必要も出てこよう。また、歴史的にもFRBが最初の利上げに着手した後にドル相場が急落するというのは比較的有名なアノマリーである。それゆえ、皮肉なことだが、年初来、見られてきたように「米利上げ観測が後退するほどドル高シナリオが延命する」という展開になっている。だが、最速で9月、順当で12月に利上げをするならば、この延命期間も近く終わりを迎えることになる。

政治的にも来年は大統領選挙を控え、米産業界からはドル高に対して苦情も出やすくなるだろうし、日本でも2016年7月の国政選挙(参院選)を前に過度な円安を志向しにくいムードが再び漂うはずだ。政治上、米国がドル高を嫌気し、日本が円安を嫌気するような構図が鮮明化する状況になれば、円安・ドル高シナリオの実現はほぼ不可能である。まだ2016年のストーリーを考えるのは早過ぎるかもしれないが、こう考えてみると、2015年は円安相場が実現する「最後の年」になるのではないかと筆者は考え始めている。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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