FRBの利上げ実施後、日銀は枠組みの修正を 水野温氏・元日本銀行審議委員に聞く

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黒田総裁、信じれば飛べますか?(撮影:尾形文繁)
市場はようやくFRB(米国連邦制度準備理事会)の年内利上げを前提に動き出した。一方、日本銀行とECB(欧州中央銀行)は、大規模な証券の購入を継続しており、出口は見えない。日銀は「量的・質的緩和」を導入して2年になるが、2%のインフレ目標の達成は困難とみられている。このまま続ければ、国債の買い入れそのものも壁にぶつかる。手詰まり感が募る中、日銀はどう動くのか、あるいはどうすべきなのか。元日本銀行政策委員会・審議委員でクレディ・スイス証券取締役副会長の水野温氏さんに聞いた。

正常化へ向けた、FRBと市場の対話はまだ序の口

――FRBの年内利上げが注目されていますが、いよいよ出口戦略が見えてくるのでしょうか。

FRBのイエレン議長は5月22日に年内に利上げをする方針を示して、市場はようやくこれを織り込んだところだ。

金融政策の正常化へ向けた課題には3段階ある。第一に、最初の利上げの実施、第二に、2回目以降の利上げに関する情報発信、第三に、数回利上げした後、証券の再投資をやめて膨張したFRBのバランスシートの縮小を開始すること。三つ目が、金融市場には最も大きな影響がある。債券市場を中央銀行が支えてきた構図が変わるからだ。正常化へ向けたFRBと市場のコミュニケーションは、まだ序の口と言える。

イエレンFRB議長は、最初の利上げを今年9月と考えているだろう。5月に、もう少しデータを見たいとしていた。米国の第1四半期の景気減速は東海岸の悪天候や西海岸の港湾ストなどによる一時的なもので、第2四半期の経済指標がよいということが確認できれば、実施に踏み切る。6月16〜17日のFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見、7月の議会証言で、来年の複数回の利上げも、市場にうまく理解させようとするだろう。

――その後の利上げのペースなどはどう見ていますか。

まだ、白紙の状態だ。今年後半の景気が強ければさらに上げていく、という程度だろう。なぜ低金利ではダメなのか、というと議論は2つしかない。インフレ懸念やバブル懸念を未然に防ぐ、というのと、将来の景気後退の時に金融緩和ができるように余地をつくっておくというものだ。しかし、後者の「のりしろ論」は、政治家の理解を得にくい面がある。また、FRBのバランスシートの縮小は、住宅市場がよほど改善していないと始められない。

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