ヨーロッパ発で金利急騰が広がった理由 ECBと日銀の超金融緩和で起きていること

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6月3日のECB理事会でマリオ・ドラギ総裁は「ボラティリティの高い状態に慣れる必要がある」と語り、金利はさらに上昇した(ロイター/アフロ)

先週、日本国債10年物金利は上昇して、昨年11月以来、約半年振りの0.5%台に乗せた。海外市場では、米国債10年物も2.4%を付け、ドイツ国債10年物はほぼ1%まで上昇した。米国債の水準は日本国債と同じく昨年11月以来の水準であり、ドイツ国債の1%は昨年9月以来の水準となる。

今回の金利上昇の主因は欧州である。欧州債市場では第一波の金利上昇が4月下旬から5月上旬にかけて起こり、ドイツ国債10年物は0.1%割れから0.8%近くまで急騰した。5月半ばには、いったん落ち着いたようにみえたが、今回、第二波が発生したわけである。4月中旬のゼロ%近い水準からするとドイツ国債金利は累計で1%近くも上昇したことになる。

欧州でQQE導入後の日本と同じ現象が起きた

欧州市場でこの1カ月半の間に起きていることの解釈として最も妥当なのは、2013年4〜5月にかけての日本国債金利の急低下、急上昇の再現だというものであろう。

日本銀行の黒田東彦総裁が就任直後の2013年4月4日に「量的・質的緩和(=QQE)」を打ち出すと、日本国債金利は10年物で一時0.3%強まで急低下した後、5月下旬には1%近くまで跳ね上がった。今回、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和が3月上旬から開始され、ドイツ国債を中心に欧州債金利の急低下が4月中旬まで続いた。現在、その大きな反動が生じているとみることができるわけだ。まさに日本のQQE開始直後を彷彿とさせる状況である。

中央銀行が大量の国債を購入する政策を開始したにもかかわらず、なぜ長期金利が乱高下してしまうのだろうか。

この問いに対しては、日本の2013年4~5月の状況を冷静に振り返ってみると、ある程度のことは言える。

第一に、中央銀行という「池の中の鯨」のような存在が市場に参入してきたことで、それまでの市場の需給構造が変質してしまったことが大きい。市場参加者が、変質した需給構造にすぐには適応できず、市場の安定が崩れてしまうのである。市場の安定が崩れると、わずかな債券の買いや売りを吸収することができずに、過剰な値動きが発生してしまう。

第二に、中央銀行のアナウンスメントがあまりにも強力すぎて、市場のインフレ見通しが不安定化してしまうということもある。長期金利は本質的にはインフレ率の関数であると言ってよく、将来のインフレ率に対する市場の見方が突然不安定化してしまうと、長期金利の適正水準も見えなくなってしまうのである。

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