FRBの利上げ実施後、日銀は枠組みの修正を

水野温氏・元日本銀行審議委員に聞く

いまさらピーターパン?  すでに検証すべき時期

――日本銀行は2%の物価目標の達成はできそうにもありませんが、旗を降ろしていません。

黒田東彦日銀総裁は6月4日の講演で、「ピーターパンの物語に、『飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう』という言葉があります。大切なことは、前向きな姿勢と確信です」と述べた。

これは2013年4月の「量的・質的緩和」(QQE)を導入した時に強い意志表明として言うのならわかるが、このタイミングでは違和感がある。2年が経過して、インフレ率2%の「物価安定の目標」を達成できていないということからすれば、「量的・質的緩和」の効果と副作用の検証を含め、情報発信をすべき時期だ。

金融政策の効果が実体経済に波及するまでにだいたい12~18カ月かかるが、黒田総裁は、異次元緩和(QQE)を実施して半年も経たないうちに、「所期の効果を上げている」と言った。このときの効果は、白川方明前総裁時代の5年間の金融緩和によるものであったと思う。

QQEは効果の割に副作用が強い

非伝統的金融政策は、どこの国の中央銀行にも知見のないものが大半であるため、「歩きながら考える」政策運営が適切だ。しかし、黒田総裁はQQEの効果をアピールする一方、副作用の説明をしない。

5月1日に日銀の企画局が出した中間レビューでは、マネタリーベースの量を拡大する政策の効果については言及せずに、国債買入れによる長期金利低下の効果を強調している。だが、長期金利を押し下げるだけなら、QQEのような副作用の強い政策をとらなくても、実現できたはずだ。

日銀は次の「展望レポート」を出す今年10月30日から来年の春までの期間に、うまく、次の金融政策の枠組みに移る準備ができればいいと思う。10月には、日銀が今主張している「消費者物価上昇率が16年度前半頃に2%程度に達する」ということは困難なことが明らかになり、また、FRBが9月に利上げできたかどうかも結果が出ている。FRBが利上げして、一時的にドル高円安が止まっても、景気がしっかりして、再びドル高円安基調になるということが確認できれば、日銀の金融政策運営にも自由度が増すことになる。

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