FRBの利上げ実施後、日銀は枠組みの修正を 水野温氏・元日本銀行審議委員に聞く

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みずの・あつし●エコノミスト、専門は債券市場。1984 年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。ブラウン大学経済学修士号、ニューヨーク市立大学経済学博士号取得。野村證券、ドイチェ・モルガン・グレンフェル証券(現ドイツ証券)、クレディスイスファーストボストン証券(現クレディ・スイス証券)を経て2004 年12月~09年12月まで 日本銀行政策委員会審議委員(民間エコノミストで初)。10年1月~ クレディ・スイス証券取締役副会長(撮影:梅谷秀司)

――日本銀行やECBは当面、今の金融緩和を続けるとしています。

日本銀行もECBも、大規模な証券の購入策、バランスシートの拡大策を当面続けながら、FRBが金融引締めに動ける環境を待っている状況といえる。米国の景気が強く、利上げができドル高になれば、基調として円安、ユーロ安が続く。

――ECBのマリオ・ドラギ総裁が、6月3日の定例理事会後の会見で、債券金利の上昇について「高いボラティリティに慣れる必要がある」と発言。さらにドイツ国債の金利が上昇し、ユーロ高が進むということがありました。

確かに、中央銀行の総裁が「ボラティリティ」という表現を使うことは珍しい。5月19日にECBのブノワ・クーレ理事が、5月と6月に資産買い入れ規模を加速するという方針を示して、市場をなだめようとしたが、結局上手くいかずに、国債相場が崩れた。そのため、ドラギ総裁は、場当たり的な発言はよくないと考えて、そのように言ったのではないか。

「市場との対話」はドラギ総裁が最も上手

ドラギ総裁はまた、ボラティリティの原因はわからないとしつつも、金融市場の安定化を狙い、「デフレから脱却しつつある」ということと、2016年9月までは現在の月600億ユーロの債券購入策を続けることが大切だということ、さらに、不十分であれば、2016年以降も続ける、と発言して保険をかけている。

ドラギ総裁は、日米欧の中央銀行トップの中では、最も適切なコミュニケーション(市場との対話)を行っていると思う。欧州の病とは何か、と考えたときに、やはり、需要不足であり、構造問題の解決が遅れていることだと指摘して、金融政策にばかり頼っていたのではダメで、成長戦略や構造改革が必要であると、繰り返し説明している。そのうえで、金融政策も最善を尽くすということだ。

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