小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか? "添加物のプロ"が解説「根本原因」はここにある

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私が考える原因は、以下の3つです。

①製造工程にて過失もしくは故意により「未知の成分」そのものが混入した可能性

②「未知の成分」を産生する他の微生物が混入した可能性(管理の過失)

③紅麹菌が変異し、「未知の成分」を生産した可能性(不可抗力)

麹は生き物である以上「変質のリスク」は避けられない

前回記事で、「麹菌」はカビ菌の一種だと述べましたが、カビ菌の中で「人間に有用な食品を作り出す」ものが麹として食品加工に利用されてきたわけです。

酒をつくる酵母のために、米をブドウ糖に変えるのです。

ところが、麹菌は「生き物(微生物)」です。生き物である以上、「変質のリスク」は避けられません

一歩間違えば、どんな雑菌が繁殖してしまうか、どんな変質が起こるかわかりません。「有用の微生物」と「病原性の微生物」は分類学上、近縁であることが多いからです。

「自然界においては1万分の1の確率で微生物の変異が起こる」という論文も出ています。

現に、今回の事故の原因として、青カビから発生することがある「プベルル酸」という物質が想定外に産生されたのではないかと疑われています。その他の未知成分も確認されているようです。

これが、どの段階で発生したのかなど詳しいことは、今はわかっていませんが、こういうことが「起こりうる」のが麹、発酵食品の世界なのです。
過去には、実際にこういうことが起こっています。

2003年、食品添加物として認められていた「コウジ酸」に「肝臓がんを発症させる疑いがある」と食品安全委員会が発表し、禁止されたのです(化粧品については再テストの結果、使用可能となっています)。覚えている方もいらっしゃるでしょう。

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