日本人が知らない南シナ海の「いまそこにある危機」 日米比首脳会談で試される同盟への覚悟
日本とアメリカ、アメリカとフィリピンは条約で同盟関係にある。3カ国の関係の中でミッシングリンクだった日本とフィリピンについて、岸田首相は2023年11月のフィリピン訪問で事実上、両国関係を「準同盟」に格上げする意向を示した。
その柱は、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練をする際の入国手続きなどを簡略化する「円滑化協定」(RAA)だ。マニラでのマルコス大統領との会談で正式交渉に入ることで合意した。
さらに日本が「同志国」に軍の装備品などを無償提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の枠組みで初めて、沿岸監視レーダーを贈与すると表明した。
さらにアメリカ軍とフィリピン軍がフィリピン国内で実施する軍事演習「バリカタン」に2024年、自衛隊が本格的に参加する方向で調整が進む。3カ国による海上合同演習の定例化も今回の3者会談で議題に上るとみられる。
いつ死者が出ても不思議はない
「3国(準)同盟」のテーマは主に2つ、台湾と南シナ海だ。2027年危機などとも言われる台湾海峡問題は、米中間最大の懸念事項であり、アメリカ軍基地を沖縄に集中させる日本にとっても喫緊の課題だ。
だが、とりあえずいま緊迫しているのは南シナ海である。マルコス大統領が押っ取り刀で駆けつけるのも自国の鼻先でこれまでにない脅威にさらされているとの認識があるからだ。
フィリピンは排他的経済水域(EEZ)内にあるアユンギン礁に老朽軍艦を意図的に座礁させ、海兵隊員を駐留させて実効支配の拠点としているが2023年来、同艦への補給を試みるフィリピン艦船への中国の妨害がエスカレートしている。
2024年3月23日には、フィリピン海軍がチャーターした補給船に対して中国海警船2隻が約1時間にわたって放水砲の発射を続けて航行不能に追い込み、乗員4人が負傷した。
補給船には日本が供与した44メートル級巡視船2隻がつき、海軍の艦船も2隻が後方で待機したが、中国の妨害を防ぐことはできなかった。負傷者が出たのは3月5日の前回補給に続き2度目だ。フィリピンでは強硬さを増す中国の対応に「いつ死者が出てもおかしくない」との危惧が広がっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら