通勤型電車はなぜ、「似たもの同士」が増えた? 山手線となんとなく似ているあの電車
最近、首都圏の電車に乗っていて、インテリアの趣向はともかく、見た目(特に側面)や設備が「なんとなく他社の電車と似ているな」と感じたことはないだろうか。E231系と設計を共通化した初めての電車は、2002年登場の相模鉄道(相鉄)10000系である。自由に形を作れるFRP製の前面を除き、車体や車内設備はほぼ同一と言ってよい。
地下鉄との間での例が多い、相互直通運転を実施している会社同士で協定を結んでの仕様統一ではなく、製造の時点でJR東日本と直通運転を行っていない会社でありながら、「ほぼ同じ電車」を導入したことで、この電車は注目を集めた。なお、相鉄がJR東日本との相互直通運転計画を発表したのは2004年のことだ。
完全な互換性は持てない
相鉄10000系と同じく2002年に営業運転を開始した東急5000系や、2005年登場の都営地下鉄10-300系もまた、E231系に準じた設計を採用した。ただし相鉄とは異なり、車体幅などに違いがある。また、相鉄、東急、都営地下鉄とも、自社路線において要求される運転性能を満たすため、走行系機器類には変更を加えている。
似てはいても、「完全に同じ電車」にできない理由は、何なのだろうか。
鉄道会社が新車を導入する時は、各社それぞれの線路条件に合わせて定められた仕様、例えばレールの間隔(軌間)に始まり、標識などの障害物に当たることなく走ることができる車体の大きさ、使用する機器類などを細かく指定し、設計を固めた上でメーカーに発注する。そうした仕様は歴史的な経緯もあって、A社とB社がまったく同じということは、なかなかない。また、線路という固定設備を用いて年中無休で事業を行っている以上、大規模な工事を伴う線路の方の改修もしづらい。
今は同じ会社であっても建設した会社が別々という事情から、路線により走ることができる電車の基本仕様が違うといった例もあるぐらいだ。阪急電鉄の最新鋭車両で、神戸・宝塚線向けの1000系は全長19000×全幅2770ミリメートル。これに対し、京都線向けの1300系は全長18900×全幅2825ミリメートルであるといった具合だ。走行性能は極力、統一が図られているものの、基本的な部分において、阪急の両路線の車両は完全な互換性を持たない。
ほかにも、軌間が違う京王電鉄の京王線と井の頭線といった例もある。両線の電車は、それぞれ別の系列だ。線路に合わせて車両を造らざるをえない以上、こうしたことも普通に起こるのである。なお、鉄道と対照的なのがバスで、バス会社からの新車発注はメーカーが用意したラインナップの中から、「このタイプを○両。このオプションを付けて」という仕方になる。自家用車に近く、このため全国各地を同じタイプのバスが走り回っている。
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