タイでの邦人援護件数は減少だが、すり・置き引き・ひったくり被害は依然高水準
「渋滞がひどく、二輪車の多いタイでは、タクシーから降車する際、車の脇をバンバンすり抜けていく二輪車に気を取られがちだが、降り際に手荷物の確認をするだけで防げる」(中西二等書記官兼領事)。
すり・置き引き・ひったくりも合わせ、これらの被害はある程度、本人の防犯意識で防げる。
ちなみに、同じく金品の絡んだ犯罪でも、「睡眠薬強盗」「身分詐称による詐欺」「宝石・洋服などの勧誘詐欺」「いかさま賭博」は、タイで生活する日本人駐在員が被害に遭うことはないようだ。
タイの地方では暴走族が大暴れ
昨年の海外邦人援護統計でタイに代わって世界ワーストとなったのは、援護件数が1,354件のフィリピン。同国は、件数だけでなく、凶悪犯罪の被害も多く、昨年だけで5人の日本人が殺害された。これは昨年、海外で殺害された日本人全体のうち、3分の1近くを占める。
同国に比べると、タイは「凶悪犯罪の少ない国」といえるが、実は統計に表れないところで、日本人駐在員が強盗傷害などの凶悪犯罪に遭遇しているケースもある。
一例が、昨年暮れにバンコクから南東に約100キロメートルほど下ったチョンブリ県シラチャ市で発生した日本人駐在員暴行事件。同市は、近隣の工業団地で働く人など日本人4000人ほどが居住しており、日本人人口の増加と共に最近では病院や飲食店など日本人向けのサービス産業も増えている。日本人向けのクラブなど歓楽街もできたが、これまで「安全な町」というイメージがあった。
そのシラチャで、昨年12月5日から9日の夜間から深夜、帰宅中の日本人駐在員が、バイクに分乗した多数の少年少女たち(地元の暴走族)に囲まれて暴行を受けた末、金品を奪われたり、あるいはそうした集団に歩行中に背後から空気銃で発砲されたりするなどの事件が立て続けに6件発生した。被害者はいずれも一人か二人の少人数で帰宅途中を狙われた。