イオンの最高益支える小型店「まいばす」の正体 首都圏に1100店超、業界の定説覆した2つの秘訣

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2つめの秘訣は、グループインフラの活用だ。まいばすは、グループで総合スーパー事業を手掛けるイオンリテールのもとではじまった、いわば完全な「プロパー事業」。創業当初から物流インフラの活用などを通じ、グループメリットを享受してきた。

まいばすのような小型スーパーでは、通常のスーパー以上に多頻度小ロットでの配送が求められる。現在、まいばすの店舗には神奈川県や千葉県などにある4つの物流センターから商品が届くが、2019年頃に開業した横浜の物流センター以外、イオングループの既存のセンターを活用している。

精肉商品の加工作業や、弁当・総菜など即食品の製造についても、イオンフードサプライなど、グループの食品製造機能会社に一部委託している。

たとえばグループのスーパー、ダイエー傘下のアルティフーズが製造する「炊込み五目おこわおむすび」。税抜き価格は99円だ。「コンビニさんがどんどん値上げする中、当社の低価格な総菜類の認知が広がっている。総菜類は、現在もっとも好調な部門の1つ」(まいばす担当者)という。

グループのプライベートブランド(PB)の存在も大きい。

3月末にリニューアルした「まいばすけっと仲町台駅南店」は若いファミリー層や学生に人気な商品を中心に、トップバリュ比率を倍以上に増やした実験店舗だ(写真:梅谷秀司)

グループの主力PB「トップバリュ」は、物価上昇局面における消費者の節約志向をとらえ、売り上げが着実に伸びている。まいばすでは当初からグループの物流インフラを活用しているため、品切れなく機動的にトップバリュを確保しやすい体制になっていることも大きい。現在ではまいばすが展開する商品数の2割程度をトップバリュが占めている。

首都圏に集中出店し、若者や女性客比率の高いまいばすが、トップバリュのテスト販売の場になっている側面もある。先日は神奈川県横浜市にトップバリュ比率が約5割となる実験店も開業した。「実験店で好調な商品はほかの店舗にも迅速に横展開していく」(岩下欽哉まいばすけっと社長)。

「コンビニと比べれば飽和からはほど遠い」

まいばすの出店開始は2005年。当初は赤字続きだったが、店舗数が増えた2016年度ごろから黒字に転換し、2019年度には累積損失を解消した。これも多店舗化によるローコスト運営が定着するまで出店を続けた、イオンの資本力があってこそなせる業だったといえるだろう。

まいばすの攻勢は続く。1都3県といっても、現在の店舗はほとんどが東京都と神奈川県に集中する。埼玉県と千葉県については、人口密度の高いさいたま市や千葉市には1店舗も出店しておらず(4月初旬時点)、開拓の余地は大きい。既存の展開地域も「ドミナントを強化するほど既存店の売り上げは伸び続けている」(二川氏)という。

当面の目標は2000店舗。これはコンビニ大手ローソンが1都3県に展開する店舗の約半数に及ぶ規模だ。岩下社長は「1都3県に大手3社だけで1万5000店以上あるコンビニと比べれば飽和からはほど遠い」と語る。この勢いはしばらく続きそうだ。

冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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