イオンの最高益支える小型店「まいばす」の正体 首都圏に1100店超、業界の定説覆した2つの秘訣

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まず一番に挙げなくてはならないのは、徹底したローコスト運営だ。

たとえば生鮮食品の取り扱い。伝統的に食品スーパーでは、同じ生鮮食品でも青果部門、精肉部門といった具合に「縦割り」の組織になっている。それによって専門的な品ぞろえを実現する反面、商品管理を含めて多くの人手をかけているため、利益の出にくい部門になっている。

生鮮品の管理作業は素人でもできる

まいばすが進めたのは、徹底的なマニュアル化だ。野菜などは「『こういう色になったら廃棄しましょう』というようにマニュアルに落とし込んでいる。素人でもすぐ(生鮮品の管理作業が)できるようになっている」(二川氏)。商品を陳列する順番なども本部主導で決定されており、現場の従業員は、タブレットを使ってマニュアルに従い作業するだけだ。

青果の商品管理は大きな課題だが、まいばすでは徹底的なマニュアル化で対応している(写真:梅谷秀司)

さらに特売を行わなかったり、売り上げの多い店舗の近くにはあえて自社競合するように出店して客を分散させたりなど、物量や客数の波を押さえ込むことで、1店舗あたり常時2~3人で営業できる体制を構築している。

一定のエリアに集中出店するドミナント出店が、ローコスト運営につながっていることは間違いない。物流の効率化や認知度向上による広告費の抑制はもちろん、特筆すべきは、それが人員面の柔軟な運用を可能にしていることだ。正社員が担う店長は、2店舗に1人というケースが多い。パート社員がスマートフォンを使って、母店以外の店舗でも空き時間に自由にシフトに入ることができるシステムも導入している。

ドミナント出店は、コンビニの専売特許ともいえる戦術。しかし、コンビニの場合、人員面の柔軟な運用までつなげることは難しい。

なぜなら、コンビニは1店1店が独立したフランチャイズ(FC)契約をベースにしているからだ。店舗の従業員は、各加盟店が独自に採用する。そもそもFCビジネスでは、「あえて自社競合をするような出店」など、到底許されない。各加盟店の利益確保が事業の根幹だからだ。

このようなコンビニと比較すると、まいばすは、直営店だからこそ可能な効率運営を追求しているということができる。

出店は他社の撤退跡を活用した居抜き出店が多く、出店コストをできるだけ抑える。その分、店舗の面積や形状にばらつきはあるが、基本的な売り場のレイアウトは全店共通として、従業員がどの店舗でもすぐ作業ができるようにしている。また、在庫置き場や作業のためのバックヤードは、通常のスーパーが店舗面積の3割近くを占めるのに対し、まいばすは1~2割に抑えている。

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