業界の異端児2社が「組織の結婚式」を行ったワケ 従業員が握る「株式0.1%」が経営に与える影響

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筆者も英治出版ファンであり、子会社化の一報を聞いたとき「あの英治さんも出版不況には勝てなかったか・・・・・・」と早とちりして悲しんだ(英治出版の業績は好調)。しかしコンサル業界から転身して創業した原田英治代表に話を聞くと、今回の事業承継は5年ほど前から準備していたという。

原田代表は「島根県海士町に親子で島留学をしていた時、人口減少やテクノロジーの変化が激しい時代に、経営者の自分が毎年歳を取るという事実に気づいた。自分が会社を抜けた後、どういう体制で経営するのがいいのか、事業承継のために何か早くしないと間に合わないのではないかと考えた」と語る。

そして「カヤックの柳澤さんには海士町に来てもらったり、応援する会社が同じだったりして1年に1回は顔を合わせる関係があったので、事業承継について相談するようになった」(原田代表)。

資本構成をどうするか

英治出版の株主は、原田代表の知人など個人が多い。事業承継にあたっては、次期代表となる高野達成編集長が経営しやすいように資本構成を見直す必要があった。

「僕自身が関わり続けられないことを考えると、資本構成を変えておく必要がある。最初は高野君と『コミュニティで株式を保有できないか』と考えたが、全部まとめて皆に分割するのは難しいのがわかった。そこに信頼できるパートナーであるカヤックが現れ、残るメンバーとともに決めた。まさに『仲間と作る現実は自分の理想を超えていく』ですね」(原田代表)

一方、カヤックの柳澤CEOは買収について「数年前から原田さんが後継者問題について話していたので、『様々な選択肢やアイデアを検討しよう』となりました」と語る。

カヤックは社員の自主性を大切にしており「多様な業種の会社をグループに入れたらどんな面白い化学反応を起こすかということを常に考えている。出版社と組むという検討も、過去何度かしていた」(柳澤CEO)。

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