松本人志VS文春の訴訟が盛り上がりに欠けるワケ 松本さんにとって勝訴以上に重要なものとは

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当初は松本さんを励ますような声が多かったものの、ネットメディアがこのコメントを記事化すると、徐々にネガティブな反応が増えるなど微妙な雲行きに。「会見どころか何ひとつ話していないのに『主張はかき消され』はおかしい」「テレビでなくネットなら、今すぐお笑いができるはず」などの矛盾点を指摘されてしまいました。

前述したように世間の人々は週刊文春や週刊誌報道そのものに不信感を持ちはじめ、松本さんを擁護するムードが高まっていただけに、再び注目を集める第1回口頭弁論の目前に、このコメントは不用意と言わざるをえないでしょう。もし勝訴するための戦略上、必要なコメントだったとしても賢明とは思えず、「松本さんはひとつ大切な目的を見失っているのでは?」と感じさせるところがあるのです。

松本さんの訴訟目的が名誉の回復であることは、「誌面はいずれかの項全面」、「電子版は判決確定から6カ月」の謝罪広告掲載を求めていることからも間違いないでしょう。そのためには損害賠償額の大小はさておき、何としても勝訴したいところですが、もはや今回の件は「どちらが勝訴したか」だけの問題ではありません。

松本さんが休業という思い切った決断を下したのは、「週刊文春をはじめとする週刊誌全体のあり方に一石を投じ、後輩や業界のために報道を変えていきたい」という、もうひとつの訴訟目的もあったのではないでしょうか。

訴訟の勝敗以上に重要な世間の支持

その意味で松本さんは、もし週刊文春の真実相当性(真実と信じるべき根拠があること)が認められて敗訴したとしても、世間の支持を得ておくことが重要。週刊誌報道を変え、自身の復帰につなげるためには、味方を増やしておくことが求められているのです。

だからこそXの最新投稿は、週刊文春のプラスにこそならないものの、このところ高まっていた擁護や復活を望むムードに水を差してしまった感は否めません。そもそも訴訟の勝敗と松本さんの復帰は必ずしも因果関係があるとは言えないところがあります。

たとえば、仮に松本さんが勝訴して名誉毀損が認められたとしても、「『性加害はなかった』という証明になるか」と言えば話は別。それは逆に敗訴した場合も同様であり、いずれにしても性加害の疑惑を完全に払拭することは難しいからこそ、スポンサーを含む世間の印象をよいものにし、復帰を受け入れるムードを保っておく必要性を感じさせられます。

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