国際収支でも問題が生じている。サービス収支赤字の中でデジタル関連の赤字が増大し、いまや、サービス収支赤字の8割程度を占めるようになっている。
また、日本の金利が低いために円安が進行し、外国人労働者にとって、日本はもはや魅力のある国ではなくなった。今後労働力不足が一層進む日本において、これは極めて大きな問題だ。
世界的なインフレの中で目立つ日本の「異常さ」
2021年にアメリカでインフレが発生し、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は、金利の引き上げを開始した。さらに2022年春のロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー価格や食料品価格の世界的なインフレが発生した。こうした状況に対処するため、各国の中央銀行が金利を引き上げた。
しかし、日本銀行はマイナス金利政策を継続した。このため、特にアメリカとの間で金利差が拡大し、著しい円安が生じた。そして、世界的なインフレが日本に輸入された。
これによって企業の利益は増大したが、賃金の伸びが追いつかず、実質賃金の伸びがマイナスになるという事態が発生した。
以上で見たような金融緩和・円安政策は、2016年に始まったものではなく、2000年頃から継続してきたものだ。
これは中国の工業化に対してとられた政策だ。中国は安価な労働力によって安価な製品を製造し、世界の輸出市場におけるシェアを急速に拡大した。これは、とりわけ日本の製造業にとって重大な脅威であった。
それに対して本来必要とされたのは、産業構造を改革して、中国では生産できない財やサービスの生産を中心にする産業構造に転換していくことであった。
アメリカはIT革命によって製造業中心の経済構造から高度サービス産業を中心にする経済構造への転換に成功し、新しい経済発展のパターンを実現していった。
それに対して日本は、古い産業構造を残す選択をしたのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら