「くも膜下出血は中高年だけではなく、脳動脈瘤や脳血管の奇形が原因となるため、年齢に関係なく20~30代でも発症します。この病気を予防できる一番の手段が脳ドックなのです」(金中医師)
くも膜下出血は、頭蓋骨の内側にあるくも膜と、軟膜の隙間のくも膜下腔(くう)に出血が起こる病気だ。約80%は、脳動脈瘤が血圧の上昇などにより破裂することで発症する。
「原因となる脳動脈瘤は生まれもった『できやすさ』があり、検査をすると若い人にも見つかります。小さなものを含めると100人に1人が持っているという報告もあります。この脳動脈瘤は太い動脈にしかできないので、頭部MRAでほぼ100%見つけられます」(金中医師)
くも膜下出血は致死率40%という怖い病気だ。しかし、破裂前の脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)の段階で見つけて、経過観察を続け、破裂リスクが高まってきたタイミングで予防的手術を受ければ、くも膜下出血を防ぐことができる。
脳ドックというと費用が高いというイメージがあるが、それは、画像はAIや読影専門の放射線専門医によってチェックされるからだ。やはり、すべての脳の病気を見つけようとすると、時間も費用もかかってしまう。実際、医療機関によっても異なるが、相場は3万~4万円ほどだ。
ただ、金中医師によると、最近は若い人を対象に、脳動脈瘤の早期発見にフォーカスした比較的安価な脳ドックも出てきているという。「若い人は、そうしたところを選ぶといいと思います」と金中医師は言う。
なお、検査を受けて脳動脈瘤がなければ、毎年必ず脳ドックを受けなくてもいい。見つかった場合は医療機関で経過観察、または必要に応じて予防的治療を考えることになる。
(関連記事:「頭痛を甘く見るな」危ない"警告頭痛"の4大特徴)
40代以降の脳ドックの受け方
40代以降は、生活習慣病やメタボリックシンドロームを抱える人が増え、動脈硬化が進行してくる。この年代になったら、脳梗塞のリスクについてもしっかりチェックできるフルコースの脳ドックが望ましいという。
脳梗塞とは、脳に栄養や酸素を運ぶ動脈が詰まることにより、脳神経細胞が部分的に死んでしまう病気。損傷を受けた部分によって、まひやしびれのほか、言語障害やものごとを理解したり、記憶したりする機能が低下する高次脳機能障害など、さまざまな障害が残り、生活に支障がおよぶことも多い。
脳梗塞のリスクを見るには、頭部MRI、頭部MRAのほか、頸動脈エコー(超音波)や血液検査、心電図などが必要だ。これはスタンダードな脳ドックのメニューで、日本脳ドック学会が推奨している内容になっている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら