電子政府で費用削減と迅速多様な行政サービスを実現目指せ

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 住居表示の表記法や姓名の漢字表記などは、表記が同じでも戸籍法上、読み方は規定されていないため、照合不能なケースが多数現れることが想定されている。

コンピュータ処理だけでは完全な照合は不可能とみられ、人手による照合作業が必要となるため、数年以上の時間がかかる事態も十分に考えられる。オーストリアでは、導入後数年たった今でも照合作業が完了していないという。

また、住民基本台帳・住民票コードがあるにもかかわらず、あえて新しい番号を導入する意義もよくわからない。

新コードと一対一対応であるなら、住民票コードを利用すればよいはず。新しい番号と住民票コードの関連づけは無駄な費用だ。住基ネットの悪いイメージは、新しい番号になったからといって払拭できるものではない。

また当面、共通コードの利用が税と社会福祉に限られる点も問題だ。18年に利用範囲の見直しをするスケジュールだが、その先のサービス拡大に本当に結び付くのか。医療情報なども含めた総合的な行政サービスに結び付けなければ意味がない。

共通番号制度は、個人情報保護が絡むため難しい問題だが、そのために行政の効率化による財政再建と国民の良好な行政サービスを享受する権利が妨げられるなら本末転倒だ。

行政による逸脱やなりすましなどの不正利用に対しては、厳しい監視や罰則を設ければよい。将来にわたって国民ニーズに応じた行政サービスを提供できるよう、制度は自由度の高いものにしておくべきだろう。

(シニアライター:小長洋子 =週刊東洋経済2011年7月23日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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